その日々をめぐる物語

せらひかり

第1話 夕涼み

 さらさらと小川が流れる川べりで、浴衣を着て夕涼みする。団扇であおげば、近づいてきた小さな羽虫が吹き飛ばされる。

 吸血鬼の血を吸う蚊はしぬにしねなくて、蜜も飲めずにかわいそう。だから私が対応してあげようね。

「また天狗になってる」

 隣で友達が飲み物をあおりながら言う。天狗だよ、偉そうなせいでそうなった。応えながら、羽虫をあの世に送ってあげる。

「あれ、可愛かったのに」

 友達は優しく呟く。自分を慕う蚊を怪物に変えるくせに。

 吸血鬼の気まぐれで不死に固定される蚊も哀れでしょう。

 そよさやと小川の上を風が渡る。

 あるかなしかの声が聞こえてきて、それらは夕涼みの者達の気まぐれをおそれていた。

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