第14話 さやかな
さやかな光を求めている。
真っ暗な部屋で、徐々に目が慣れてきたはずなのに、物の輪郭が分からなかった。明かりをつけたらバレてしまう。手探りで、寝床から這い出した。
床を這って、壁に行き着く。壁までほんの数歩しかない。狭い。
保護、されたんだって。こんな部屋に。普通の人間みたいに。君は違うだろうって言われて。
でも、仲間だったのに。
自分には、つやつやした鱗はないけれど。力強い比翼もないけれど。
ドラゴンの違法飼育と言われて、みんな一斉に捕まってしまった。
山に捨てられたドラゴンを、育てていただけなのに。
山の主が出かけている間に、こんなことになるなんて。
人間の世界に馴染まずに山に住んでしまった自分に、山の主は山の恵みを与えて、養ってくれたのに。
たびたび、人里に戻されたけれど、時代も人も変わってしまって、姿形の変わらない自分は、怖がられてしまうから、山に帰ってしまう。
「こんなところにいた」
不意に近くで声がした。山の主だ、迎えに来てくれたのかと思い、けれど、誰も守れなかったことを思い出して、謝った。
主は全然気にしていないようだ。
「あぁごめんね、留守をしているうちに、こんなことになるなんて。ドラゴンって、飼育届がいるんだって。知ってた?」
主は、自分の尻尾で床を叩く。壁もすり抜けてきて隣に座るそれは、たぶん思慮深く見える目でこちらを見ている。
「世が世なら、僕はもっと怒っていいんだろうけれど。龍なので。でも、ドラゴンって外来種らしくて、在来種と生態系の保護のために管理が必要なんだって。山の火トカゲとかにも悪影響があると言われたら、山主としては、まぁ従うほかないよね。うちの子達が迷惑するなら。ちゃんと守ってあげないと」
饒舌に語って、主は続ける。
「さ、帰ろうか」
「帰って、いいんですか」
「ここにいたいなら止めないけれど」
首を振って、主にしがみつく。
外へ出ると、ドラゴンが嬉しそうにキュイキュイ鳴いた。口元から熾火が溢れている。
帰ろう、自分達の住処へ。
この繋がりを何て呼べばいいか分からないけれど、たぶんまだ、何かがあるのだ。
行き場なく、それを握りしめる。
目にはさやかに見えねども。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます