第17話 半年

 生まれて半年で、もう立派な大人だった。大人というか何というか。

 ツバメだってそれほどかからずに巣立つのだから、おかしなことではないのかもしれない。猫だと一年はほしいけれど。

 狛犬として作られた焼き物は、尻尾を振りながら、庭を走り回っていた。そもそもは、この間まで玄関先に置かれていた、掌サイズの焼き物である。

 長く使った茶碗とかはツクモガミになるらしいが、やっぱり半年は短すぎる。

 わんと言いたげな顔でこちらに駆けてくる。走るのが楽しいらしく、子犬そのものだ。

 配達の人が来ると、一応警戒して唸り声をあげる。かたかた、きしきし。

 ときどき、引き綱をつけて散歩に出かける。家では狛犬のコマちゃんだが、近所の人にはツクモちゃんと呼ばれている。

 子犬なのかと聞かれるが、元は狛犬、成体として作ったので、大人である。しかし作られたのも、動けるようになったのも、一年も経っていない。子犬、でいいような気もする。

 撫でられるうちに額はつやつやと輝き、欠けたときに手入れできるよう、今のうちから金継ぎや焼き物の補修方法を調べている。

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