第3話 飛ぶ

 飛ぶ練習をした。巣立ちはまだだけれど、校舎の屋上から、箒一つで空を舞う。

 魔法使いらしい所作。

 使い魔の黒猫が悲鳴をあげる。

「そんな、ツバメみたいにぶっ飛ばさなくてもいいのに!」

 飛ばさないといけないよ、ここからもっと遠くへ行くためには。

「遠くに行くなら、なおさらさ。ゆっくり観光しながら飛べばいいんだから。スズメみたいに」

 若くて気が短いので、祖母から引き継いだ使い魔の言うことは煙たくて仕方ない。

 でも、どこへだってついてきてくれるよね?

 確かめるように視線を向けると、

「まぁ、どんな速さでも、君の祖母上よりは遅いからさ。いくらでも、くらいつけるよ」

 黒猫はにやりと笑った。

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