第7話 ラブレター
古いラブレターをもらった。学生時代に恋人がくれたのに、開く前に、自宅の棚の後ろに滑り込んだらしい。
それを、部屋に住み着いた妖精が見つけてきた。
「はい、これ。大事なものなんでしょ?」
胸を張って差し出すから、苦笑いして受け取った。
いいことをした、と言わんばかりな妖精に、一応お礼を述べて、冷蔵庫にあるケーキをご馳走する。
妖精は、早く開けてみないのかと、そわそわしている。羽ばたきが早すぎて、カップに当たって、紅茶がこぼれる。
「あっ! ごめんなさい!」
妖精は真っ青になって謝った。紅茶がラブレターにかかって、水性ペンの文字が見る間に滲んでいく。
「いいよ、直接聞くし」
騒いでいるうちに、ラブレターの差出人が帰宅する。
「えっ、まだ持ってたの」
「持ってたというか。棚の後ろにあったの」
「読んでなかったってこと?」
差出人は、怪訝そうにラブレターに触った。
「返事を聞いたら、君、読んでくれたみたいに、うまいこと返事してくれたのに」
「告白の返事を口頭で求めてくるから、あぁ、そうなんだなって思っただけだよ。思いが伝わってたならいいじゃない」
「そうなんだけどさ。すごく悩んで書いたから……あっ待って開けないで、恥ずかしくなってきた!」
どうにか差出人からラブレターを死守し、拭いて乾かして引き出しにしまう。
いつか読みたくなったときに、答え合わせだ。
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