第12話 チョコミント

 カップ入りのチョコミントアイスを食べていたら、物欲しそうに見つめられた。

 物陰からちょっとだけ覗いているのは、姿形がはっきりしない何者か。

 だめだめ、これは私の。

 すっきりさっぱりした香り、こってり甘いチョコの味。

 カップアイスを食べ終えても、まだ見ている。

 冷凍庫から他のアイスを取り出す。チョコミントアイスだが、棒付きのものだ。

 そっと差し出すと、それは、おそるおそる受け取って、ひとなめした。しびび、と毛並みのようなものが逆立つ。

 結局、それはアイスを床に置いて逃げてしまった。何だ、チョコミントは苦手だったのか。

 物陰を覗き込むと、寝そべっていた。さっきの爽やかな香りで、陰鬱な気持ちが吹き飛んだらしく、姿形は物差しみたいにすっきりしている。

 残念ながら床に落ちたアイスは処分して、甘いチョコアイスを皿にのせて、近くに置いてやる。

 物差しみたいなそれは、にゅっと手を出して、アイスを丸呑みして嬉しそうだった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る