悪役令嬢になったからには、貴方のフラグを全部圧し折る

　碇二朱《イカリニア》は人間が嫌いだった。
　愛想笑いと媚びを売れば生き残れる歪な職場。喧嘩が絶えない家族。

　そんな中での彼女の唯一の癒やし。
　それは『乙女ゲーの悪役令嬢が主人公を苛める所を見る』事だった。

　悪役令嬢が主人公をいびる部分だけゆっくり堪能し、主人公が恋をしそうになったら未読スキップボタンを押す。
　選択肢は主人公が誰とも恋仲にならないようにし、万が一悪役令嬢が痛い目を見るようだったらプレイをやめる。
そうして日常の憂さを払う日々の中、休日の朝から酒を飲みゲームをしていた彼女は、母と父の喧嘩の仲裁の最中に事故で命を落とす。

　目が覚めると、そこはプレイしていた乙女ゲームの世界。
悪役令嬢の記憶を持ったまま、だけれど先の展開も知らず、ゲームをスキップしていた為に前の展開…続きを読む