第1話③田崎達也
何の結論も出ないまま、
お昼休み終了の放送を合図に沈んだ顔のまま
松戸は立ち上がり。部屋を出て行った。
お昼を食べ損ねたからか、何も言えなかったからか、あまりに松戸と自分が似ているからか、
田﨑は自分の苛立ちを抑えられず
後を追うように部屋を出た。
田﨑はコーヒーを買ってベンチに座り
松戸の話を思い出していた。
こんなことをするために、大学を出て就活を頑張った訳じゃない。
田﨑自身がいつも思っている。
社報を台車に乗せて各部に配布するために、世界の注目を浴びる陽の当たる場所を捨てたのではないと。
松戸は非常に優秀だ。
様々な支社にお使いにだけ行かされる日々では嫌になる。
そんな会社なら辞めた方がいい!と、
田﨑は浅はかに考えてしまっていた。
松戸を探そうと立ち上がったとき、
「どこに行くの?」と、村西樹の声がした。
村西は田﨑が先ほどまで座っていたベンチに
座り、隣に座るよう手招きをした。
村西は田﨑と同じ人事部の2年先輩で、田﨑とは違い業務量も多く、村西の関わるプロジェクトの話を聞いていても田﨑には何一つ理解することができなかった。
「松戸さん何だって?」
という村西の問いに、
「経営企画ひどいんです。
あんなに優秀な松戸さんを支社にお使いにばかり行かせているみたいです。優秀な方の育て方を考えていただくにはどうしたらいいと思いますか。
人事としてこんな状況を放っておいていいんですか」
と一気に話した。
少し時間を置いて、
「俺だって活躍する機会を与えられていない。って感じているから感情移入してそんなに怒っているの?」
静かに村西は聞いた。
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