第5話③かとう
田﨑はその日お神輿を担いでいた。
チームロゴが入ったオリジナルの鯉口シャツを着ている体格の良いブルーウイングスのグループは祭の中でも一際目立っていた。
外国人選手も混ざって大きな声で練り歩くと周囲は人だかりがすぐにできる。
田﨑達が始めた地元の人に応援されるチーム作りの取り組みの一つだ。
公式HPでもこの祭に選手が参加することは言っていたが、気がつけばかとうがお神輿を担ぐ自分たちの姿をカメラにおさめていた。
祭の後に、参加した選手達と割烹東に行くので、田﨑はかとうを誘った。
今日の祭にも参加していたので、
疲れた表情で包丁を握る大将。
魚料理が有名な東だが今日はみんな空腹だったため、たくさんの唐揚げと冷たいビールで、大将やかとうも一緒に楽しんだ。
飲みながら田﨑は今日かとうが撮った写真を見ていた。
素人目で見てもかとうの写真はいい写真だった。
技術的なものは田﨑には分からないが、みんなの何気ない飾らない表情がたくさん撮られていた。
「かとうさん、この撮った写真どうするんですか」田﨑は聞いた。
「特に目的があって撮った訳ではないので、データをパソコンに移して僕が見たい時に思い出して見るくらいですね」
とかとうは答えた。
「この写真良かったらSNSにあげてもらえませんか」
「もちろん。問題ないですよ。」
試合には公式カメラマンが来てくれて写真を撮ってくれるが、このようなイベントにはカメラマンは来ないので、取り組みをSNSでファンの方目線で発信してくれるのはとてもありがたいことだった。
田﨑はお礼を言いつつ疑問を口にした。
「かとうさんのラジオ聞きました。
話すのも上手でびっくりしました。
人前で話すお仕事していたのですか」
かとうは
「実は地方で昔ラジオのパーソナリティをしていたんですよ」
と照れ臭そうに言った。
続けて、
「今は全く関係ない仕事ですけどね。
チームに一目惚れして応援したくなった。というお話は以前したと思うのですが、ラグビーと一緒で自分の強みを活かして応援したいな。って考えたら、ラジオだ!ってなりました。
いつか田﨑選手もゲストで出てくださいよ」
とかとうが出演交渉をしているのを見て、
みんなは笑いながら
ラジオ初出演!とからかっていた。
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