第4話③練習試合横浜大学戦
田﨑と松戸が話す後では、秋野が妻の美幸と話していた。
「試合見るの久しぶりだな。負けちゃったけど」と楽しそうに美幸が行った。
美幸は秋野の高校の同級生で高校からNo.8として活躍する秋野をずっと支えていた。
フルタイムで働きながらラグビーをする中村建設への入社を決めたときには、会える時間が減ることなど全く気にしないで、
「仕事とラグビーを両方全力でするなんてすごいね。
その道を選ぶなんて尊敬するよ」
と、素直に応援してくれた。
結婚してからも仕事をしながら4人の子供を育てながら、秋野が留守がちな家を守ってくれていた。
手を抜くところは手を抜いて、
しっかりするところはしっかりして、
明るくパワフルな美幸に秋野はいつも助けられていた。
秋野は
「タックル体験楽しんでいた?」
子供達の様子を聞いた。
「何回もする。ってやめなかったよ。パパの試合始まるよ。って言ってもまだ、タックルする。って。
桜庭さんがジュース飲もう。って誘ってくれてようやく試合を見られたよ」と美幸は笑った。
「試合の時はね、
『パパだ。パパだ。』って騒いじゃって。お隣にいたファンの方に『秋野選手のお子様なんだ。パパすごいね。』って言われて喜んでいたよ。
ラインアウトでジャンパーになった時は、『パパが抱っこされてる。』って手をたたいていたよ。
試合にもっと早く連れて来て見せてあげれば良かった」
周りを走り回っていた子供達が秋野に気がつき集まってきた。
「パパ。すごいの?『お隣の人がパパすごいんだよ。』って言っていたよ。」
「私はね、パパが抱っこされて高い所でボール取ったの格好良かったよ。」
と秋野の足に抱きつきながら子供達は口々に言った。
美幸は
「パパはお仕事して、練習して、試合にも出てすごいんだよ。またパパが抱っこされる所を見に行こうね」
子供達は
「うん。パパを見に行く」
と嬉しそうに言った。
秋野は意を決して美幸に話を始めた。
「練習がない日も仕事で遅くてごめん。
家のことを全部任せてばかりで本当にごめん。
仕事に関しては人事の田﨑が少し協力してくれて落ち着きそうだから。
俺は美幸と子供達に満員の観客の前で試合して勝つ俺の姿を見て欲しいんだ。年齢的にあと何年ラグビーができるか分からないけど。
少しチームに割く時間を増やしてもいいかな」
と聞いた。
「仕事もラグビーも全力でするパパを尊敬しているよ。子供達にもパパみたいになって欲しいなって私は思っているよ。だからたくさんの観客の前で勝つパパを見せてあげて。
私も見たいからさ」
と、昔と変わらない笑顔で美幸は答えた。
「家事の手抜きは変わらず見逃してね」
と付け加えた。
2人で目を合わせて笑った。
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