第7話③ファン感謝祭

ファン感謝祭当日集合時間より2時間早く田﨑は会場に到着していた。

ブルーウイングスはファン感謝祭も準備から選手が行う。


とは言え集合時間で充分なのだが、田﨑は気になって早く目が覚めてしまい、家にいても仕方がないので会場に来た。


会場を見回っていたが荷物も搬入されていないのですることもなく、手持ち無沙汰に会場近くのカフェで時間を潰すことにした。


田﨑は不安だった。

色々な地域イベントに参加し、チームみんなでSNSを発信し日本一ファンの方を大切にするスローガンに合わせて行動してきた。

ファンの方に受け入れられているのか。不安だった。

コーヒーを飲んでいると、秋野が家族で入ってきた。秋野は田﨑を見つけ驚いた顔で、

「早いな」

と声をかけて、空いていた隣のテーブルに座った。


「心配なんです。

何が心配かってうまくは言えないんですけど」

田﨑は答えた。


「田﨑頑張っていたからな。

田﨑が家族で楽しめるイベントを練習試合の時に考えてくれたから、今日も子供たちが楽しみにして早く行こう行こう。って騒いで大変だよ。

仕事はまだバタバタだけどラグビーに関わる全部に今は前向きに取り組めるようになったよ。


だからって言うのも変だけどファンの方は来てくれるよ。

選手に田﨑の想いは伝わって、選手それぞれの発信でファンの方に伝わっているよ。

子供たちの友達もたくさん来てくれるみたいだから」

秋野は真面目に答えた。


秋野の子供たちは無邪気な顔で

「今日は何をする?」

と話していたが、誰かを見つけたのか、

「お兄ちゃんだ!」

と手を振り始めた。


おはよう。と子供たちの頭を撫で、

「2人とも早いですね」

と答えたのは桜庭だ。


「桜庭さんも早いですね」

と田﨑が答えると、


「昔から遠足の前の日は俺絶対眠れなかったんだよね。田﨑は暗いな」

と明るく笑いながら答えた。


「不安なんだって」

秋野は答えた。


「田﨑は真面目だからなぁ。

試合にあまり出られない俺なんかがファンサービスしても。って悩んでいた時に、自分らしくファンの方と接することを喜んでくれているファンの存在を教えてくれたから俺はチームに居場所があることを知ったよ。

人のことを元気にしようと後ろから背中を押してくれる田﨑が考えたことなら大丈夫だよ


お世辞かも知れないけど、俺に会いに来てくれるってSNSでメッセージくれている人たくさんいるしね」

とニヤッと笑いながら桜庭は言った。


「3人揃ったら川島も来るかもな」

と言いながらみんなで話していたが、時間になっても川島は集合場所に現れなかった。


集合時間を過ぎて汗だくで走ってくる川島を見ながら、3人は笑った。

「川島らしいな」


よし。行くか。4人で手を合わせた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る