第6話③川島豪

「SNSは何を投稿しても良いらしいよ」

田﨑は軽い口調で川島に声をかけた。


「何を投稿しても良いのは分かってますよ。

仕事して練習して帰る生活だから、ファンの方が驚くような珍しいことはないんですよ」

川島は言った。


ファンを驚かす必要ないだろ、、、

と言いながら数日前まで自分も同じ考えだったことを笑った。


田﨑は自分の投稿を見せた。

最初のコーヒーの投稿には村西が言った通りファンからのコメントがいくつか寄せられている。


田﨑に頑張ってと言ってくれているもの、

田﨑が買っていたコーヒーと同じものの写真を投稿しているもの。

投稿に感謝しているもの。


田﨑はコメントに対してお礼を伝えている。


小さな日常の出来事を伝えるだけでも、反応があることが嬉しくなっていた。


「こんなことでいいんですね」

川島は率直な感想を伝えた。


「こんなことって失礼だな」

と田﨑は笑った。


「川島は自炊してるだろ、その写真を載せてみたら。

意外と食べているものに興味ある人多いみたいだから」


「見せられるものじゃないけどいいんですか。

見栄えが良い料理じゃないし」

と川島はまだ消極的だったが、半ば無理矢理にその場で田﨑と一緒に初投稿を終えた。


アドバイスをした以上、田﨑も気になり川島のSNSを見ていた。

川島の見た目はきれいとは言えない料理は、

ラガーマンの料理する姿、

飾らない川島の人柄とともに大きな反響があった。


ファンの方からこの野菜を足した方が良いですよ。

この材料でも試して下さい。

など、川島専属の管理栄養士がたくさんできたようだ。


「ファンの方はあの投稿で身近に感じてくれるんですね。僕も料理のこと栄養のこと勉強になって一石二鳥ですね」

と、ご機嫌で投稿を続けている。

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