第16話①千葉県富津合宿

ブルーウイングスは毎年シーズンが始まる前にチームビルドも兼ねて合宿を行う。


田﨑は練習が始まると来たことを後悔するものの、始まる前は遠足気分で意外と合宿は好きだった。


メンバー全員、木曜日金曜日は有給休暇を取り、祝日合わせた5日の合宿だ。


クラブハウスに集合し貸切バス2台で宿泊場所のホテルまで向かう。


途中のパーキングでは他メンバーが合宿の憂鬱さからぐったりしている中、

田﨑は川島を連れて熱々の小籠包を食べたあと、さらにソフトクリームも食べて旅を満喫していた。


そんな2人をうんざりした顔でメンバー達が見守っていた。


チームの雰囲気は良かった。


ホテルに着き部屋に荷物を置き、再集合した時にはみんなの顔から笑顔は消えていた。

勝つための練習をしなければならない。


ウォームアップとして

もも上げを30回を5セット

ヒールフリックと言われる踵が尻につくまで足を後方まで跳ね上げながら走ること30回を5セット

通常であれば余裕だが、今回は砂浜で実施していた。


砂浜の不安定さは通常の数倍体に負荷がかかった。負荷は数倍だが怪我の可能性は低くなるので効率的なトレーニングだ。


3メートル離したコーンの間をサイドステップでダッシュして、コーンにタッチしてから、

パスを投げてもらい、すぐにパスを返してまた他方のコーンにサイドステップでダッシュするサイドステップでは砂に足を取られて転倒する選手が

多数いた。


砂浜練習が終わる頃には全身砂まみれになった選手たちは立っているのがやっとだった。

座り込み立てない者もいた。


吉川考案の砂浜練習はフィットネスで優れなければ勝てないということを暗に伝えていた地獄のメニューだった。


息が落ち着いた者から海に飛び込み汗と砂を流していた。

選手の表情からは達成感が感じられた。


吉川の言葉を聞くまでは、、、


「明日朝6時砂浜集合だ」

再びみんな崩れ去った。

明日もあるのかと、、、

吉川は笑いながらその様子を見ていた。


ホテルに戻るとそこにチーム宛の荷物がたくさん届いていてみんなを驚かせた。


ファンのかとうからは、チームが推奨しているプロテインが箱で届いていた。

選手の好みに合うように様々なフレイバーをかとうは用意していた。

熱が込められた便箋5枚に及ぶ応援レターとともに送られていた。


松戸が所属する経営企画からはスポーツドリンクが、

桜庭が所属している官庁営業部の春山部長からは、筋肉疲労にきくマッサージクリームが届けられていた。

また田﨑や吉川が所属している人事部からはたくさんの入浴剤が届けられていた。


以前祭で一緒に神輿を担いだ地元の人たちからは20本以上の日本酒が届けられた。


たくさんの贈り物を見ると、田﨑が推奨した日本一ファンを大切にするチームという方針のもと行動した結果、愛され応援されるチームになりつつあることを感じた。


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