第18話④シーズン開幕

田﨑がアップを行っているときに何気なく客席を見ると、かとうと同じように一眼レフカメラを構えているファンの姿をたくさん見かけるようになった。

かとうが写真をアップし、選手がリアクションを取るにつれて写真を公開してくれるファンが増えた。

写真が選手のモチベーションをあげてくれていた。


カメラ隊の中にいつも田﨑の写真を撮ってくれる見知った顔を見かけたので、田﨑は感謝の気持ちで会釈をして片手をあげた。


その瞬間凄まじい数のシャッター音が田﨑の耳に聞こえてきた。


あまりの枚数を撮られていることに苦笑いしつつも田﨑は少しその場に留まった。

シャッター音が落ち着いたタイミングで再びアップに戻った。


アップを終えて控室に戻る際自然とメンバーが集まり一つの集団となっていた。

今までのブルーウイングスはバラバラに帰っていた。


これから一緒に身体をはる大切な仲間を強烈に意識するメンバーに変わっていたからだ。


今シーズンはリーグ昇格という目的をもって、

みんなで苦しい練習を乗り越えてきた。

仕事で躓く人、ラグビーを続けられなくなった人たくさんの試練があったがみんなで乗り越えてきた。

試合に出られないメンバーも含め、仲間たちに対する熱い気持ちが込み上げてきた。

そんな仲間と強烈に【信頼】【感謝】【つながり】を感じているからそのような行動に出たのだった。


控え室に戻ったメンバーに対して、主将の浜田は声をかけた。


「いよいよ今日からシーズンが始まる。

一つ一つ勝ちを積み上げる以外近道はない。

絶対にリーグ昇格を果たそう。

グランドに立つメンバーだけじゃない。ノンメンバーもスタッフもファンもみんなで闘おう。

行くぞ。俺たちみんなならいける。


「WE AREー!」」


田﨑が「BLUE!」

全員で、「WINGS!!!」


絶叫に近い形で叫び、

メンバー達でハグし合い気合いが充分漲った。



「試合開始5分前」

吉川が声をかけて、選手達はグランドに続く道に浜田を先頭に一列にならんだ。


先にホームチームであるブルーウイングスが入場しようとすると、目の前には長く続くファンの花道が広がっていた。


選手一人一人に激励の言葉をかけるファンの間を通り抜け、選手達はグランドに駆け出していった。


キックオフ

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