第8話②バックスコーチ

バックスコーチが不在のまま練習を続けるが、決められたメニューをこなすだけの日々に少しずつ選手のストレスが溜まってきた。


練習中ですらサインプレーのミスが目立つようになってきた。

バックスメンバーのイライラがプレーにも現れ、フォワードメンバーとの小さな衝突も勃発した。


フッカーの秋野がボールキャリー中に止めようと焦ったバックス選手が高い位置にタックルをした。そのまま後ろに倒された際に頭を強打した秋野が脳震盪を起こしたのだ。

秋野はすぐに医務室に運ばれた。


ロックの若色は


「いい加減にしてくれよ。

練習中も集中力なくミスばかり、おまけに危険なプレーで秋野さんに怪我までさせて。

当分ばらばらの練習にしてくれよ」


と強い口調で言い捨てた。


桜庭が何か口を開こうとしたが、若色に同調する声に押され何も言えなかった。


医務室で安全を確認されてグランドに戻ってきた秋野はフォワードとバックスの間にできていた深い亀裂に言葉を失くした。


一つになったと考えていたチームが音を立てて崩れ去っていく。

こんなに脆いものだと気がつき、田﨑は黙って見守るしかなかった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る