第11話①新生バックスチーム
吉川をコーチとして迎えたいとバックスチームの気持ちが一つになった翌日、田﨑は吉川ではなく
官庁営業部の春山部長と桜庭を誘ってお昼を食べていた。
「吉川に断られたんだって」
揚げたてのアジフライを美味しそうに食べながら春山は言った。
「プレイスタイルの違いが理由なんですけど、ミーティングでどのような方針も受け入れて、チームで勝っていきたいって決まったんですが、それを吉川部長へちゃんと伝わるか不安で」
「吉川は頑固だし自分の意見は曲げないからな。
ただ吉川は仲間のためなら頑張れるやつだからさ、小細工せずに勝ちたいという想いをぶつけた方がいいよ」
「大丈夫ですかね」
「そんなのはやってみなきゃ分からないから、今考えることじゃないな。
吉川に本格的に断られてから考えた方がいいよ、時間の無駄無駄」
外回りで日焼けした顔を崩して春山は笑った。
「今日玉砕覚悟で吉川部長と話してみます。
玉砕したら助けて下さいね」
と幾分かは表情が柔らかくなった田﨑が答えた。
あと一つの問題
吉川の仕事について考えていると、
村西がいつの間にかそばにいて、
「悩んでるね」
「村西さんすごいですよね。
自分の悩みセンサーでも付いているんですか」
「田﨑くんが分かりやすいだけだよ」
村西は笑顔で答えた。
「吉川部長ってお仕事大変ですか?」
「何?大変に決まってるでしょう。
急にどうしたの?」
「部長にコーチのお願いをしたんです。
断られたんですけど、仕事を中途半端にしたくないから。と言われて。
でも自分が部長の仕事なんてできる訳ないですしね」
「今の田﨑くんならできるかもしれないよ」
と村西は自信がありそうな顔で頷いた。
「部長はね、管理以外に実務もたくさん担当しているんだよ。田﨑くんが異動することが決まった時に業務分担したんだけど、田﨑くんに振る分を部長が一旦は俺が引き取るって。
仕事慣れてから様子を見て渡して行く予定だったみたいだけど、田﨑くんずっと拗ねていたから部長が担当のままなんだよ」
村西は笑顔で冗談として話しているが、
田﨑は情けなくて言葉を失った。
自分が1人で何でもできる気になって不満ばかりを周囲にぶつけ、どれほど自分が守られているのかすら気付かず感謝の気持ちを持てていなかった自分が本当に情けなくなった。
そしてそんな自分を見守り続けてくれた吉川部長や村西始め周囲の人たちに申し訳なく、言葉もなく田﨑は項垂れていた。
そんな田﨑に村西は
「まだまだ間に合うんじゃないかな。
間違えていたらごめんなさい。をちゃんと言う。
信頼を失ったら取り戻すために行動する。
それだけだよ。
まだ大丈夫」
背中を押してくれた。
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