第6話 頂点捕食者

こうして晴れて冒険者となった俺は防具屋に来ていた。目的は砂漠専用の装備である。買えなくてもいいので、値段を確かめたい。


「銀貨10枚か…あと8枚も足りないな」


もちろん、宿屋代も考えると銀貨は1枚温存しておく必要がある。なので実質9枚必要か。


「冒険者ギルドで手頃な討伐依頼があるか見てみよう」


【街のすぐそばに現れた砂漠鰐の討伐 120銀貨】

【北の沼地のヒュドラ討伐 9000金貨】

【洞窟の調査 250銅貨】

【ワイバーンの巣の特定 300金貨】


まだヒュドラ残ってたのかよ、しかも懸賞金とんでもないことになってるし。そうだな、他2つは面倒だし1番やりやすそうなのは砂漠鰐かなぁ。

砂漠鰐。かつて世界にはファソラスクスと呼ばれるワニに似た大型爬虫類がいたというが、それと似たようなものなのだろうか。

ただ、一つわかることがある。


この砂漠鰐、かなり危険な生き物だ。

キラーウルフの懸賞金が100銀貨だったのに対しこちらは120。まあもちろんキラーウルフの時と違って街のすぐそばにいるから懸賞金も上がってるのだとは思うけど…


「それだけの強さを持つなら仲間にしておきたいんだよな」


魔物使いが魔物を仲間にして無力化した!と言っても討伐報酬は出ないのだ。ちゃんと報酬の全額を受け取るなら退治する必要がある。

基本的にはその討伐対象の素材が目的の人間が依頼を出してるから、だっけ?


「ただ、今回は全額受け取れなくても構わない」


砂漠専用装備が作れたら魔物の素材を売ってそれで金を稼げばいいからだ。


「いっちょやってみますか!!」


俺はこのクエストをうけることにした。




砂漠鰐は普段は地中に潜んでいて、獲物が現れたときに獲物に飛びかかり姿を現すのだそうだ。

なので、メアリ、オリオン、ブライガー、キジクジャクの4匹を杖から出して細心の注意を払いながら進んでいる。

てかそれにしても


「暑い…」


頼むから早く出てきて〜!!!


この砂漠はティタノスコーピオンやマミーなどの魔物がかなりの数いるようだ。そいつらを蹴散らしながら進むと…


「?…!」

ブライガーが反応する。これは血の匂いを感じたブラッドタイガーが見せる行動だ。ブラッドタイガーは血を水代わりに飲むからな。


「待て、血の匂いだと?」


この砂漠にはブラッドタイガーが反応しない匂いの血が流れるサソリなどの虫系かアンデッド系などそもそも血が流れない種族が多い。

もっとも、蛇など普通の血を流す種類もいるが…


「ブライガー、乗せてくれ!」

他の3体をしまい、ブライガーに跨り移動する。


そこにいたのは…


「クソッタレ!どれだけ化け物なんや、ちくしょう!支援魔法は!?」


「アリサが重傷なのよ!このままじゃ死んじゃう…」


「私の矢が全く効いていない。撤退を視野に入れろ…相手は逃してくれないと思うが…」


そこにいたのは男女2人ずつのパーティー…そしてそれと交戦する巨大なワニ、

砂漠鰐がいた。普通の砂漠鰐なら彼らも苦戦することはなかっただろう、だが…



「レベル70?」

あのワニのレベルは、俺の想像の遥か上を行っていた。


奴は、この砂漠の頂点捕食者なのだ。

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