第33話 脱皮
「ヒョ”ロロー””!」 「グ”ゥー!」
アルタイルとバサがその野良バジリスクは処理したが、アオの様子は未だ変わらない!めっちゃ苦しんでる!!
「魔物杖に…しまえない!?」
ファラクに乗せていくしかないか…!
「ヴァイはアオを、キジクジャクは俺を乗せて全力で街へと戻ってくれ!」
「ツクツク」 「ガァ!」
ファラクの方が速いが、空の方が危険は少ない。一刻も早く戻らなければ…!
美しい鳥と荒々しい竜が光の速さで空を駆けている。近くにも小さな街はあったが小さな病院しかなかった。やはりラグナロク王都まで戻らなければ…!
「ツクツク!!」
「ガァァァ!!!」
もう日は沈みかけている。暗くなれば、比較的安全な空でも何が起こるかわからなくなる。
「ただ暇つぶしでマタンゴ討伐するだけのはずだったのに…!」
どういうわけか超危険区域に入ってしまいどういうわけかチハイザメと交戦してしまいどういうわけか仲間を死なせかけている…!最高にまずい、あのときもう誰も死なせないと誓ったはずなのに…!
ラグナロク王都にようやく着いたとき、既に日は沈み辺りは真っ暗になっていた。
「ちょっとー!どこに行ってたのよ!」
「そうですよ!19時から明日のチハイザメ討伐に向けて作戦会議をしようって話だったじゃないですか!」
女性陣に詰め寄られてる。って、今はそれどころじゃねぇ!!
「病院!病院どこ!?仲間が死にかけてるんだ!!」
「な!?じゃあ応急処置として回復魔法かけるわ!誰が死にかけてるの!?」
「アオだアオ!うちのかわいい蛇!」
「ちょっと見せてみなさい!この子ね!?リジェネヒール!キュアー!」
サフンが上位回復魔法と状態異常を打ち消す魔法を使った。だが…
「おい!?効いてないぞ!??」
「あれ!?」
呪文失敗か!?とりあえず病院だ病院!!
「いえ、魔法は成功してるはずです!つまりこれはどこにも異常がないということでは…?」
「これがか!?」
もう街中だが仕方ない!ファラク出して病院まで突っ込んでやる!
そう思ったときだった。
「なんか完全に光に包まれてない?」
ん?
あ、ヒュドラのファルドがなんか言ってる。なになに…ってか魔物杖に入ってても話せるんだ。
そういえば毒ブレスを当てたのにアオにそのダメージは全く入っていなかった…?
そういえばゼアトが言ってたな。ヘビタイショウは毒無効だったのかなんちゃらかんちゃらって。実際はヘビタイショウは毒無効なんてないから気のせいじゃないかと言ったんだけど。
…ん?今度はマティスさんからだ。
そういえばアオ一人でサタンフロッグを完封してたのを見た。サタンフロッグはバジリスクに睨まれると硬直する弱点があるのだが、ヘビタイショウであるはずのアオに睨まれたときにもそれが発動していた?
あ、これって…
「そういえば、ヘビタイショウってバジリスクの下位種だったわね…もしかしてバジリスクに進化するとか?」
サフンが首を傾げながら言った。まさか、そんなわけが…
「ゴシャー!!」
アオがバジリスクに進化した!!!
ここは剣聖の住む屋敷、その応接間。
「貴様、何をしていたかと思えばチハイザメを一人で討伐しにいってたのか…」
あと16体の仲間たちを忘れるな。
「驚きやわぁ。明日やることなくなっちゃったやないの」
「本当はお散歩程度のつもりだったんだけどな…」
まさかチハイザメと交戦する羽目になるとは思わなかった。そしてクロツバサより圧倒的に弱いとは思わなかった。多分これチハイザメ、クロツバサ、ウネリツノの順番で倒すべきだったんだろうな。今までチハイザメが討伐されなかった原因はチハイザメの生息地が超危険地帯だったからだと思っている。
「じゃああとはウネリツノだけか、ミナト殿。チハイザメと同じようにあっさり倒せるのではないか?」
ハリムがそう楽観気に話すが…
「流石にウネリツノはしっかり準備するつもりだよ。あれは三怪物最強って言われてるし何より…」
今まで味方にしてきた魔物たちがほとんど使えない。これが問題だ。
「今まで仲間にしてきた魔物の中でまともに泳げるのは…ファラクだけか」
「ゴァ…」
見るからに嫌そうな顔をしている。そりゃそうか、何せこの子…
「ゴァ!ゴァー!ゴァーァ!」
「君、泳ぐの好きじゃないからね…」
魔物使いだからといって魔物が全て言うことを聞くわけではない。嫌なことには反抗もする。そう、ファラクは上手に泳げるが泳ぐこと自体は大嫌いなのだ。ちなみにカメのくせにメアリは全く泳げない。ほんとにカメか?
「これは海部隊を結成しなくてはな…」
ゼアトがそう呟いた。うーむ…海部隊かぁ……
「他にも問題はあるんだよな。第一、水中だから俺たち人間が呼吸できないし…酸素ボンベとかあるのかな?」
「その点については心配しなくてもえーよ?」
ん?どういうことだ?溺死しろってこと?
「うちの優秀な僧侶が時間制限つきやけど無酸素状態でも生きれる魔法が使えるねん。だから、気にせんでもええよ?」
まじか。いや…どんだけ。
「アガスはそう言ってるけど、大人数にかけるとかは無理だからね?魔力が持たないから」
優秀すぎるだろ。まあ、今日は疲れたから続きはまた明日で……ちなみに、チハイザメの報告はファルコがしてくれてるらしいからとくに気にする必要はない。じゃあ俺は寝る!
お日様が登ってきた。小鳥の囀りと共に起床する。俺は確かめたいことがあってクロム草原に移動した。
「で、バジリスクへと進化したアオさん」
「ゴシャー!」
見た目は前よりデカくなって頭に2本ツノが生えた感じだ。色は変わってない。で、このアオさんなのだが…
「こ、こいつ直接脳内に語りかけてきやがる…」
なんと、テレパシーが使えるのだ。なんでだよ。バジリスクってそんな生き物なん?
しかもこれ、めちゃくちゃ恐ろしいことに…
「は?どれだけ離れてても俺と俺が仲間にした魔物となら交信可能?」
「ゴシャー!」
なにこれ、チート?
あと熱探知レーダーの範囲が前よりかなり上がったのもエグい。毒ブレスとか毒無効とか戦闘面もそこそこできるようになったけどそれ以外の面がヤバすぎる。
ちなみに、アオが進化する条件は毒のブレスを浴びること、レベルが90以上になることの2つらしい。敵にトドメを刺した魔物以外の魔物たちのレベルも上がるから結構レベル上げはイージーになりつつある。レベル100以降はもうレベル上げれないのは悲しいけど。
「ウネリツノ討伐は今回のチハイザメとは違ってかなり時間がかかりそうだし、海だけでなく地上でできることもあらかたやっておきたいな」
宿屋に金払うの嫌だしそろそろ本拠点とか作りたいよね。
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「チハイザメもやられちゃったか!警戒、必要みたいだね!」
羊頭の魔族はそう話す。この態度からはとてもじゃないがこの男がかつて私と同じ魔王だった存在などとは考えられない。魔王と言っても”異世界の魔王”だったのだが。
「アレが破られる日もそう遠くはないだろうな。準備だけはするよう他の奴らにも伝えておけ、ロイド」
最高幹部であるロイドに命令する。
「承知いたしました」
ロイドは最古参である。………るのに…ああ、もう戻れないのか。
「守ってみせる」
誰にも邪魔はさせない。
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