第28話 第二部隊

盟友を助けるため。それだけが目的でカルキノスはこの戦闘に乱入した。彼らには自分ではかなわないことも、理解していた。



「なんというか…すごい執念だな」


凶暴性が増し、他者に害を与えることしか頭になかったナイトメアデスワームですらオオトカゲの毒によってかなり悶えていた。しかし、このカルキノスは違う。苦しみながらも俺たちに向かって歩くのを止めないのだ。


「だが流石にそろそろ限界だろ!?」


オオトカゲの毒をかけたのもそうだし、さっきからずっとベガで風の刃を乱射してる、そろそろ倒れてもおかしくない頃だ。

このカルキノスのレベルは64。対してベガは67。相性もレベルもこちらが有利なはずなのだが…





ヒュドラとの戦いは苛烈を極めていた。


「この程度でまだまだ倒れるわけないやん?」


と仲間の戦士は言っているが、それもかなりの痩せ我慢をしているようだった。マンティコアやカイリキホークにも疲れが目立ってきており、毒の吐息の妨害も失敗が多くなってきた。この毒の吐息の威力は凄まじく、硬い甲羅で守られた戦姫すら顔に苦悶を隠せていない。ただ…


「?ヘビタイショウとは毒のダメージを無効化することができたのか?」


小さき司令官はその攻撃を完全に無効化しているようだった。マジックゴーレムはともかく、ヘビタイショウが毒のダメージを喰らわないのは初耳だ。自分の勉強不足だったか?

そしてその小さき司令官は忙しい主人の代わりに仲間に対してこう告げた。


これ以上は限界、第二部隊にバトンタッチするように、と。





「やっと倒れた!!!」


このカルキノス、ナイトメア種よりもしぶとかった。戦闘不能状態になっていたので仲間にしようとしたができなかった。クロツバサの時と同じように既に主人がいるみたいだ。

細かい説明をする暇はないので略すが、多分この主人はヒュドラのことだと思う。そして


「これは…アオの撤退命令か」


いつも指揮しているのは俺なのだが、たまにこうして離脱することもある。そのときはだいたいキジクジャクやアオが自慢のリーダーシップを発揮してくれる。


「まあそんなことは置いといて。俺たちも退却するぞ、ベガ」


ベガと一緒に後方へと戻っていく。ここからしばらくは第二部隊がヒュドラの相手だ。





「「「?」」」


魔物や人間どもが退却している。だが…何故か、地面に謎の生命体がいるような……いや、これは自分の気のせいか。


「ゴァー!!!」


訂正する。自分の判断は正しかった。地面から突然砂漠鰐が奇襲してきた。それと同時に、サイや雉などのさっきとは違う生物たちが襲ってきた。そして…


「ラグナロク剣聖、ファルコと申します。以後お見知り置きを」


人智を外れた化け物にすら丁寧に名乗るこの男こそが、ラグナロク最強の剣聖である。

彼がついにこの戦場に参戦したのだ。




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