第50話 チームB・陸上
一方そのころ、陸上でも動きがあった。
「なんやなんや、急にどうしたんや!?」
彼の名前はアガス・ロベール。アカタキという国の出身で、そこそこ名の売れた冒険者パーティーのリーダーをしている。彼は野心溢れる冒険者……であるはずなのだが、人当たりが非常によく誰とでも仲良くできる人間だ。さて、そんな彼にもひとつだけコンプレックスがあるのだが…それは置いておこう。
「ニャ!ニャニャ!」
「やれやれ、冒険者なのに貧弱すぎて嫌になっちゃうわ。ちょっと走っただけなのになぁ…」
嘘である、彼は決して貧弱などではない。鍛えられたブラッドタイガーのブライガーとほぼ同じ速さで走るなど、普通の人間にはできない。
彼は自慢の赤髪から零れ落ちた汗を拭い、また走ろうとすると…
「おい、少し待て!」
「ヒョロロー!」
「なんや、そんな汗水垂らして!もっと体力つけようや」
アガスとブライガーに遅れて走ってきたのは、アガスの幼馴染であるハリムと冒険者仲間であるミナトの魔物たち。
「いきなり走らないでくださいよー!ほら、メアリちゃんも怒ってますよ」
「あー、すまなかったわ。そりゃ悪かったで」
アリサが口を尖らしてアガスに文句を言った。彼女が言っているメアリは、今のしのしと頑張って走っている。だが、アガスたちになかなか追いつけない。
メアリはミナトの仲間の中でも最古参のメガド。まあ、大きい亀である。彼女はやはり亀であるからか走るのは苦手である。
「しっかし、ブライガーくんは急にどないしたんやろな?」
「わからなない。確かここら辺は…クロツバサの元出現区域だったはずだ。彼も友好的な性格をしているが、やはり魔物だ。何かここに感じるものがあるのかもしれんな」
「でも他の子は特に何も感じてなさそうですよ?」
「そうなんよ。だから、変やなーって……なあ、ファルドくん。どういうことかわかるか?」
「「「シャ?」」」
唐突に話を振られたヒュドラのファルドは困惑した。だが、その反応からして…
「やっぱわからんかぁ…」
彼らの主人であるミナトは仲間モンスターたちの言葉はわかるが、アガスたちは魔物使いではない。だから、こちらの言葉は通じてま、彼らが何を言っているかは基本的にはわからないはずなのだが…
「何事もできないと決めつけちゃあかんよ。そんなの、人としてダメやん?」
目を見れば、たとえ相手の言葉は分からなくても意味はなんとなくわかる。それが、アガス・ロベールの成功術である……というのは、いささか過言か。
「ま、ブライガーくんの後をついてけばそのうちわかるやろ」
「それもそうだな…まだまだ、時間はある。ここら辺はもう調査され尽くしたと聞いたが、まだ何かあるかもしれんしな」
ハリムは突然現れたハイゴブリンの眉間を弓で撃ち抜きがら、そう話す。チハイザメ元出現区域ほどではないが、ここも魔物はよく現れる。彼らが苦戦するほどの強い魔物は出ないが、それでも稀にオーガなどが出てくることがあるため油断は禁物だ。
「それもそ……あれってブライガーさんじゃないですか?あんなところで何を?」
ブライガーが一心不乱に地面を掘っている。まるで、そこに何か大切なものがあるかのように…
「ニャオーン!!」
ブライガーがその図体に似合わぬ高音で鳴いた。アガスたち人間にはわからなかったが…魔物たちにはわかったらしい。
「「「シャ」」」
「グゥ」
ファルドやアルタイル、ファラクにバサと力持ちな魔物たちがブライガーと共に地面を掘り始めたのだ。
「なんや……ここにも、何かがあるっちゅうわけやな」
「ああ…チハイザメ元出現区域の遺跡と似たようなものがこの中に埋まってる可能性が高い」
流石は経験深い冒険者とでもいうべきか、アガスたちはそこに何が埋まってるかを瞬時で理解した。そして…
「これでも腕っぷしには自信あるんよ。手伝わせてや」
「グォ」
アガスも魔物たちと協力して、地面を掘り始めた。すると…
「「「シャー!」」」
ファルドが先へ先へと繋がる、大きな大きな空洞を発見したのだ!
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