第49話 ギガロドンの群れ+α



「ォォォ…」


サルヴァントに急所を突かれた龍喰らいはすぐさま意識を失った。


「あとは杖をかざしてやれば…」


メアリやコケコのような味方化拒否タイプでないことを祈って、俺は魔物の杖をかざした…!


「大丈夫だった!ありがとうありがとう!」


無事何のトラブルもなく龍喰らいを仲間にできたので、龍喰らいが回復するのを待ってから、再び海の探索をしようと…


「ゴシャ?」


アオが急に何か騒ぎ始めた。えーと…なになに…


「何か巨大な魚の魚群がこっちに来てる?」


確かに、海は魔物の群れと接近しやすいが…巨大な魚の群れか。バラクーダとかじゃないのか?


「んー?何かしら、これ」


アオに続いてティルも同じくその”何か”に反応する。海の魔物であるティルが疑問を抱く?なんかおかしくないか。


「多分ギガロドンの群れだと思うけれど…知らない生物の匂いがこびりついてますわね」


何、ギガロドンって。


「ギガロドンってのは20mくらいの大きさのサメね。影鰐や磯撫でと並ぶ危険なサメよ」



何、影鰐と磯撫でって。

サフンの説明によってギガロドンについての疑問は解けたが、今度は影鰐と磯撫でとやらに興味が湧いてきた。まあ、それはいいや…


「知らない生物の匂い?」


「なんですかね、これは…なんか、爬虫類チックな匂いが少ししますわね。ほら、メアリとかファラクとか。彼らの匂いと似てましてよ」


爬虫類チックな匂い?魚人とかそんな感じ?わからないけど。


「ゴシャー!」


やっぱりこっちに接近してきてるか。これは…連戦になりそうな気がしてきた。


「最悪、ファラクも呼び出すか」


おそらく今頃ファラクたち陸上組は拠点付近で狩りをしてるはず。レベル上げも目的だが、一番は金だ。

拠点作りやアダマンタイト装備のせいで中々に金欠だし、少しでも魔物の素材を調達して売らないと活動資金が枯渇する。


話を戻そう。嫌いな海から解放されたファラクは無事に陸上生活をエンジョイしてるらしいが………


「今呼んだらキレるよな」


「ゴシャ」


今テレパシーの使えるアオに連絡を取らせたのだが…まあ、結果は、その……


仲間だからといって奴隷ではない。仲間にした魔物が嫌がる行為をするのは非常によろしくないのだ。


「まあ、できるだけ海勢で頑張ってみよう。泳げないからあんまり活躍はできないけど、海の中でも問題なく活動できるアクベスもいるんだし」


「」


巨大蟹であるアクベスは水の中でも溺れることはない。しかし、泳ぐのは絶望的に下手であるため海で運用する場合トリッキーな使い方となる。

巨大な魔物の背中に召喚して、ハサミでガッチリと挟ませるとかね。


泳ぐのは上手いが水の中だと呼吸はできないアオとは非常に対照的だ。彼女には水中呼吸の魔法を使っているため、無理矢理だが海の中でも活動することができる。


休ませている龍喰らいの上でまるで自己主張するかのようにアクベスが両手を振り上げている。


「」


あ、比喩とかじゃなくてほんとに自己主張だった。


「仲間たちの傷は…まあどれも深くはないか」


サルヴァントだけ傷が目立っていたがサフンの回復魔法によりあらかた治っていた。仲間モンスターたち自体はまだまだ戦えそうだが…


「私はちょっとキツイわね。そろそろ休憩しないともたないわ」


「なら、撤退するしかないか」


流石に脳内戦闘民族でもないわけなので、とりあえずギガロドンの群れは一度放置しておこう。


俺たちがそれぞれ騎乗しているリゲルとアオに海面へと浮上させた。そして…


「出てこいベガ、サバル!」


「ァ」


「クェ」


他の仲間たちは全て杖の中に戻して、ベガとサバルの上に乗って休憩することにした。


「とりあえず、ギガロドンの群れたちは放置しよう。何があるかわからないし…」


あまりリスクは取りたくない。いやまあ、ギガロドンとかも仲間にしたいんだけど…


「クェ」


「だよね」


杖の中から全て見ていたベガが言うように、既に何者かにそのギガロドンは飼い慣らされている可能性が高い。全てのギガロドンにティルが見たことのない魔物の匂いがこびりついてるらしいからな。通常、そんなことはありえない。


「ァ!!!!!!」


「やめてあげて…それは」


サバルが上空から雷落としてそいつらを感電死させてやろうと言ってるんだけど。人の心無いのか????



「(あー、それは難しいと思いますわね。デンキダツに貫かれてもピンピンしてるの見たことありますし、多分電撃に耐性があると思いますわよ」


「マジ?」


「(マジ)」


杖の中からティルが反論してきた。ええい、一体どこまでデンキダツは俺たちの邪魔をしてくれば気が済むんだ!!デンキダツがいなければ絶対ギガロドンは電撃に適応してなかっただろ!!


「まあ、とにかくあれから離れた方がいいわね。さっさと行きましょ」


「クェ」


こうして、怪しさ満点のギガロドンの群れから離れた水域へと飛んでいったのだが…





「うーん…この感じ、来てますわね。ギガロドンの群れが」


「は?」


「さっきのと同一?」


「そうですわね」


「ファ!?」


さっきの場所からだいぶ離れてるはずなんだけどこれっておかしくないか?


「ffefee」


やっぱこれ、つけられてないか?


「確かにギガロドンは比較的執念深いとは聞いたことあるけど……ここまでとは流石に変ね。しかも、まだ直接は遭遇してないわけだし」


そう、そうなのだ。ティルの匂い探知で直接遭遇せずに逃げれたのだが、ここまで追ってくるのはどう考えてもおかしい。


今、俺たちは中型の魔物であるアンモナイトの見た目をした魔物と交戦し、休んでいたところだったのだが…ちなみに、アンモナイトも仲間にしようとしたが墨を吐かれて逃げられた。ちくしょう。


「まあ、仕方ない。つけられてるならやるしかないか」


割とマジでたまたまだったという可能性もあるけど…なんか、胸騒ぎがする。ここで倒しとこう。


「とりあえず、ドラクイはギガロドンに気づかれないように奇襲を頼む。赤潮お願い」


「ォォォ」


仲間にした龍喰らいにはドラクイと名付けた。彼は基礎スペックも優秀なのだが、やはり注目すべきは昏睡の潮だろう。


昏睡の潮は非常に強力……なのだが、味方にも影響があるらしい。だから、こういった奇襲でしか使えないのが玉に瑕。


「サルヴァント、ティル!最前線は任せた!アキモたちは彼らの援護を頼む」


「ファー!」

「カプ」


こうして、俺たちはこの謎の残るギガロドンの群れと交戦することになったのだ…!

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