第14話 差別撤廃作戦

「すみません、お宅の息子さんをこんなボロボロにしてしまって」


「いえいえ、元はといえばこのバカ息子が悪いんですから」


「ク…クソ親父…!」


あの決闘のあと、キジクジャクに剣聖息子を病院へ運ばさせ、アガスたちと何があったのか事情を説明した。


どうやら、このダンディーな人が"本当の"剣聖らしい。俺が戦ってたのは、その息子。


「まあ、そりゃそうだよな」


異世界ものでよくある最弱職が最強に泡を吹かせる!おれすげえ!なんてことは現実では起こるわけがない。


最強は、最強なのだ。

そう、この剣聖は


「レベル80。」


うちのパーティーで1番レベルが高いのがファラクのレベル75。多分だが、今の俺たちではこの剣聖に勝つのはかなり難しい。余談だけど剣聖息子の方はレベル24だった。


でも、この剣聖がわざわざ俺に会いにきたのは何故なのか。


「国王がミナト殿のことを心配してたんですよ。それで、僕に命じたんです。召喚した勇者が消えてしまった、様子を見に行け、と。」


あ、あの国王が俺のことを心配だと?

銀貨15枚で俺を城から追い出したあの国王がか?


俺の困惑を察したのか剣聖はこう話す。


「ラグナロクもラグナロクで魔物使い差別がある国でして、あまり大きな援助はすることはできないのです。大金をあげてしまうと、国民からの反発が酷いので…」


なるほど。国民からの反感を買わずかつなんとか俺が生き延びれるギリギリの金額を攻めたのか、あの国王は。


「はぇー、わかりました。そうだったんですね」


今までクサレ外道ニョッスオワオワリ国王と呼んでいて、すまなかった。


「さあ、勇者様の無事は確認できたんだ。帰るぞ、ゼアト」


「待てよ親父、まだ怪我が治りきってないんだけど」


「知らない。自業自得だ」


そう話しながら剣聖親子は帰っていった。


…そうだった。

この世界は基本的に魔物使い差別が酷いんだった。最近は頼れる魔物たちや冒険者仲間がいて完全に忘れていた。


「魔物使いの地位向上を目指さないと満足に国から出ることもできないね」


現状差別のない国はここ、アカタキとカリヨネッタだけだ。

魔物使いがここまで嫌悪されている理由は、単純だ。


【人に害しか為さない魔物を従える者を信用できない】 これだけだ。


魔物は基本的に作物を荒らしたり積極的人を襲ったりする。魔物使いが仲間にした魔物は命令されない限りそんなことはしないのだが…


「まあ、その偏見のせいで今の俺、いや?俺たち魔物使いは苦しめられてるってわけか」


魔物使いが主軸となって何か大きな社会貢献をしたらこの偏見も薄れるかもしれない…例えば


「クロツバサの討伐、とかだな」


クロツバサは運送、農業、冒険などほぼ全ての産業にダメージを与えている、いわゆる害獣だ。奴を討伐できれば魔物使いの評価は大きく上がるに違いない。


だがいくら魔物の仲間たちがいるとはいえ奴はあまりにも強大すぎる。俺だけじゃ到底勝てる相手じゃない。もちろん、アガスたちを加えてもだ。


「対空戦力のある冒険者か…」


魔法使いや弓矢使いなど。ただ、それじゃ魔物使いの評価は上がらない。


「あ!魔物使いの国、カリヨネッタの人たちに頼るのはどうだ?」


そこにはかなりの魔物使いがいるはずだ。その人たちと力を合わせれば、クロツバサも倒せるんじゃないか?


決まりだ。カリヨネッタに行き、魔物使いたちで連合軍を組む。そしてクロツバサを討伐。そうすれば、魔物使いに対しての偏見を取り払えるだろ。


「ただ、カリヨネッタに行く前にもう少し対空戦力を整えておきたい」



そう、例えば昔山で見かけたマンティコアや火山にいるとされているドラゴンなどだ。

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