第47話 龍すら捕食対象
アダマンタイト装備は、オリハルコン装備の次に優れた装備としてこの世界では有名なようである。もっとも、オリハルコンをさらに上回る性能のものもあるのだが。それが…
「それがウルトラダイヤってわけか」
そう、アルタイルが肩身離さず持っているウルトラダイヤだ。
ただウルトラダイヤはあまりにも希少すぎるため、ウルトラダイヤ装備が作られることはまずないらしい。残念…
「ええっと…この道であってたっけ」
「ザァ」
以前カリヨネッタ首都へ赴いたときに、そこそこ有名である武器、防具屋に行ってアダマンタイト装備の特注をしていたのだ。
その頼んでいたアダマンタイト装備が完成したというので、俺は受け取りに来たというわけだ。
「しかも普通のアダマンタイト装備とはわけが違うぞ!なんてったって…」
なんと、ナイトメアデスワームやクロツバサ、チハイザメなどの素材なども組み込まれているのだ。その分お高くついたが…まあ、いいだろう。
「あいよ!アダマンタイトの剣に防具。それぞれ3セットな!」
40歳半ばくらいだろうか?かなり漢気がある店主からアダマンタイト装備をもらった。
「ありがとうございます!」
「これからも贔屓にしてくれよな」
アダマンタイト装備もミスリルと同じく軽い装備のはずなのだが、流石に魔改造したからか普通に重い。俺1人じゃ運べないので、バサを呼び出して荷物持ちをしてもらうことにした。
「あーのどかだ」
「キュー」
バサは荷物持ちをしているため今は戦えない。なので護衛としてドクカゲを出している。ドクカゲは戦闘ではあまり目立たないけど、それ以外が優秀なんだよね。
「キュ!キュー!」
ドクカゲが出す毒は貧弱な俺の攻撃手段以外にもある役割がある。
どうやらオオトカゲの毒は冒険者や研究者などに需要があるらしく、まあまあな値段で売れるのだ。生活費はこれひとつで賄えるレベル。あ、あとおつりもあるわ。
ちなみにお金の計算とかが得意らしく、会計全般はドクカゲに任せてる。アオと同じようにドクカゲは非戦闘要因なのだが…ひとつだけ、他の誰にも劣らない特技がある。それは…
「あ、スライム」
「キュ!」
「あ、とけた」
スライム特効が凄まじいのである。弱スライムという例外はあるが、基本スライムという種族には体に触れたもの全てを溶かす能力がある。なので、スライムに近接攻撃を仕掛ける人間や魔物はまずいない、溶けるから。
「」
「そうそう、だからスライムには魔法とかで攻撃するのがセオリーなんだよね」
幼いころスライムに殺されかけたと言っているアクベスが、ハサミをギチギチさせながら肯定した。
マレムなど酸攻撃に耐性を持つ者以外はスライムに防御力なんて概念は通用しない。なんでも溶かしてしまうからだ。
それが、毒でも…
「溶かすからといって、別に毒に耐性があるってわけではないからな」
塩をかけられたナメクジのように、毒をかけられたスライムは一瞬で絶命してしまうのだ。アオやファルドも毒のブレスを放てるから同じことはできるけど、コスパとか考えたらドクカゲの圧勝だった。
「グゥー」
おっと。そんなことを考えていたらいつの間にか拠点へと帰ってきていた。
あとでオリオンとアガスにアダマンタイト装備をプレゼントせねば……
「だから装備が変わってるのね」
「ミスリルは白っぽい見た目だったけど、これは黒っぽくてかっこいいでしょ。なんというか、ダークヒーロー的な?」
ツヤッツヤでとても美しい。なるほど、これには冒険者の憧れの的というのにも頷ける。
アダマンタイト装備を受け取った次の日。俺たちはまたこの海を探索していた。アオ、コケコ、ティル、サルヴァント、リゲル、アキモと大量の仲間がいるからか海もあまり怖くなくなってきた。まあ…これにファラクを加えてもまだウネリツノに勝てる気はしないが。
「クラーケンにする?龍暗いにする?それともアタ…」
「近い方は?」
「龍喰らいですわね」
「じゃあそっちで」
「あの」
水中版アオのティルがいるため目当ての魔物を探すのにもそこまで苦労しなくなったのは大きい。アオは水中にいるとレーダー能力がなど弱体化するからな…
「ここら辺にいますわね、注意した方がよろしくてよ」
龍喰らい。それは、エイのような見た目をした危険生物である。こいつはその気になればシーサーペントすらも捕食してしまうほどとてつもない強さを持つ。
「たまに返り討ちにあってるらしいけど」
まあ、シーサーペントも海の中では上位の存在だし仕方ない。さて…
「ゴシャ!」
「来ましたわ!」
鯨の潮のような謎の何かを背中から上げながら、龍喰らいが前方から姿を現した…!
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