第3話 禁忌の来訪者とのろまな戦姫

戦姫は、彼を主人と認めなかった。


「俺が、甲羅の鎧…メガドロの甲羅を身につけていたからか」

心を通わせて、やっとそれが理解できた。


「まいったな…ここまで来てか」


だが、もう俺にやれることはない。このまま、去ろうとした。


突然自分に馴染みのある生き物が現れた。

老いた雄ライオンだ。


「は?」


もちろん、この世界にいるはずがない、いてはならないもの。あ、実はあれも勇者だったりするのかな。転生したらライオンだった件!


「ーーーッ!!」


おたけびだ。体がすくむ。あのライオンはおそらく万全のメガドロには勝てないだろう。だがボロボロの俺も、瀕死のメガドロも今の状態じゃ奴には勝てないだろう。

あのライオンは餌にありつけていないようだ。俺を眼中にせず、メガドロの方へ忍び寄っていった。毒ついてるけどそれ食えるの?


今、逃げれば助かる。

だが、足が動かない。


今、逃げれば助かる

だが、足が動かない。


今、逃げれば


「不意打ちタックル!」


甲羅の鎧を前に突き出して全力でタックルした。ライオンは怯む。しかし、それがどうした?とでもいいたげな目だ。


銅の剣を構え、俺はこのライオンと戦うことにした。使えそうなものは…剣とまだ残っている毒溜まり。あとは瀕死のメガドロとほぼ壊れている木の盾だ。


「流石に、もう誘導作戦は使えない」

メガドロ戦のときは、チュウトカゲの群れがたまたま近くにあったから助かったが、それももう全滅している。

他の魔物を探そうにも、今この場から離れたら瀕死のメガドロはおそらく別の魔物に殺されるだろう。それに、メガドロはのろまだから助かったがライオンは俊敏だ。なすりつけの前に、まず先に俺が殺される。

銅の剣1本であの悪魔と戦うしかない。


銅の剣をやつの頭に刺そうとする、だがしかし避けられた。お返しと言わんばかりに鋭く尖った爪が俺を襲う。

なんとかかわしたが、俺は地面に倒れてしまった。ライオンはようやく腹が満たされるのだと歓喜し俺を殺そうとしてくる。

声にもならない絶叫をあげながら銅の剣で抵抗する。しかし、それは死ぬまでの時間が少しばかり短くなっただけだ。第二の人生は、あっという間に過ぎ去っーー


瀕死のメガドロがライオンに向かって全力で不意打ちのタックルをした。瀕死にも関わらず、メガドロには到底出せないであろう速さで体当たりしたのだ、年老いたライオンにとっては致命傷だろう。来訪者は、その命を落とした。


メガドロが、仲間になった。だが相当無理をしたのだろう。ライオンを殺してすぐに倒れた。


「まずい」

自分の命を救い、仲間になってくれたのだ。

自分のために買った薬草をメガドロに塗っておいた。銀貨1枚の上薬草だ。なんとかなってくれよ。



そして俺は魔物の死体の剥ぎ取りを行うことにした。20のチュウトカゲとライオンの死体を。


「トカゲの毒を売ればそれなりの金になるだろ。あとは、ライオンの牙と爪だ。」


ブラッドタイガーの素材だと騙して売ればかなりの金にはなるんじゃないか?


「ただ、一部は取っておきたいな」


チュウトカゲの毒もライオンの牙も爪も自分の装備の素材として使えるかもしれない。1部は取っておくとしよう。

俺はひとまず薬草の入っていた袋にチュウトカゲの毒を入れておくことにした。


「薬草と混ざって中和とかするんじゃないかと思ったが、まあ大丈夫だろ」


ちなみにこの袋は薬草という医療品を扱っているからかかなり頑丈だ。少なくとも、チュウトカゲの毒くらいなら問題ない。


死体の剥ぎ取りを終えて、俺はメガドロの様子を見に戻った。


「おお、結構元気になってる」


流石は上薬草。かなりの効果だ。

名前は…そうだな。


「君の名前は今日からメガロドン…って痛い!」


この子主人に何するの!全く、しつけがなってないな。これもしかして女の子だったりとかするのかな、それっぽい名前にしよう!


「じゃあ、メアリでいい?」


あのカメ、納得したらしい。あの後ちゃんと調べたら雌だった。なにこれ、俺のヒロインってカメなの?

頼りになるカメことメアリが仲間になった。チュウトカゲやライオンを倒してかなりレベルは上がったらしく、最初見たときはレベル20だったのにレベル30になっていた。ちなみに、俺のレベルは3。何故?


魔物の素材を売って得た金は銀貨3枚。ブラッドタイガーの牙と爪(本当はライオンだけど)がかなり高く売れた。そして俺は武器屋に寄り木の盾を新しく買った。

愛してるよ、盾。

あとは、ライオンの牙と爪で銅の剣を改造してもらった。まあ、少しは強くなっただろ。あとはチュウトカゲの毒入りの袋を持ち歩くようにした。新銅の剣はチュウトカゲの毒を浴びても全く問題ないのだ。なので強敵が現れたら剣に毒を塗って戦うことにした。


「チュウトカゲの毒ってめちゃくちゃ日持ちするらしいからね、こりゃ使えるだろ」


ちなみに、わざわざチュウトカゲの毒を自分の剣につけて戦うなんて変態は俺以外にはいないらしい。よく冒険者が扱う剣は毒に含まれる微量の酸に耐性がない。そもそも、チュウトカゲの毒は非常に弱い。チュウトカゲの毒を使うくらいなら上位種のオオトカゲの毒を武器に塗った方がいい。


「まあ、ないよりはマシだって!」


そんな俺たちは今日もクロム草原に狩りに出かけた。今日は異世界生活3日目。三日坊主、なんて言葉はあるがここはそれでやめさせてくれるような優しい世界ではない。


「メアリがめっちゃ強すぎるww」


そう、巨大カメことメアリがめちゃくちゃ強い。ゴブリンスライムニクグイチョウ程度なら容易く倒している。


「もちろんキラーウルフとかなら別だけどな…」


あれは超危険生物だ。レベル100を含む大量のチュウトカゲ相手に勝ったメアリでも激戦になるに違いない。そして多分負ける。


「ブラッドタイガー…」


この草原に住む凶暴な猛獣。あれとメアリの2体がかりなら勝てるかもしれない。ひとまず、やることは。


「今日の目標はオークとヒトクイチョウを仲間にすることだ」


メアリにそう話すとなんだか不服そうな目をしている。確か、魔物使いは自分の使役する魔物の言葉がなんとなくわかるんだよな。どれどれ


「ーーーッ!!!」


自分1人で十分…オーク程度なら捻り潰したこともある…?


うわ、こいつエグい。本当にレベル20だったのか?



草原をちょっと奥に進むとオークがいた。なんか、豚と牛を合わせたみたいな顔してる。木の棒持ってて怖いな、アレ。


「レベルは…18か」

よしよし、それなら勝てるだろう。

早速取り掛かる。


基本的にはメアリが軸となって戦い、俺が援護する感じだ。甲羅の鎧を着てるからある程度はダメージも大丈夫だが万が一ってこともある。ちなみにメアリはまだ俺が甲羅の鎧を着てることに苛立ってるらしい。


「お金溜まったら変えるからそれまで我慢してくれ」


と言って許してもらいはしたが。

さてさて、オークがついに倒れた。そしてすんなり仲間になった。やはり低レベルだからか、メアリに傷はほとんどなかったが一応薬草を塗っておいた。あと、そうだな。オークにはオリオンと名付けた。オークにつけるにはもったいない名前かも。


「モヒィ!モヒィ!」 


鳴き声まで牛と豚が混ざってやがる…



次に目指すのはヒトクイチョウだ。空を飛べるというのはかなりありがたい。だが、ヒトクイチョウはブラッドタイガーほどではないがそれなりにレアな生き物だ。今までなかなか見つからなかったのだがとうとう見つけた。


まあ、ヒトクイチョウではなくブラッドタイガーなのだが…

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