第61話 逆転のグローリー

「dpmggmad」



ウネリツノはクラーケンの肉を食べやすいように切り、一口サイズにしてから自分の口へと運ぶ。海の覇者に相応しい、優雅な在り方…


ウネリツノが悪夢クラーケンの残骸を食い散らかしている間に、俺たちは作戦会議を始める。


「どうするのアレ。悪夢クラーケンの攻撃を当てたとはいえ、それでもこっちの方が不利だけど」


「ファ」


「うーん…ティルがウネリツノの匂いを覚えたから追跡も簡単だし、やっぱ逃げた方がいいかも」


さっきまで死闘を共に繰り広げていたクラーケンの残骸を見て、俺も怖気付いてしまった。襲いかかってきた魔物の命を、仲間を通して間接的に奪うことにも慣れたが…流石にこれはグロテスクすぎ、ほじくり返された眼球が水を漂ってるし…


完全に白けて、撤退ムードになりつつあった。ウネリツノの厄介なところは一度逃すとどこに行くかわからないところ。チハイザメやクロツバサと違って、出現区域が固定ではないのだ。なので、本来は探すのにかなり手間がかかる…のだが、ティルの探知能力のおかげでそれはもう気にしなくて良くなった。

ここは一度退いて、後日また討伐しにいけば…


「ゴシャ」


「この状況をひっくり返す妙案がある?」


突然アオが俺たちにある提案をしてきた。なんだなんだ、何をするつもりなんだ。オオトカゲの毒を上空からばら撒くとか言い出さないよな?


えーっとなになに…今の戦力を確認させてくれ?あー…


「まだ戦えそうなクロム、ボロボロのティル、サルヴァント、ドラクイ。あとはコケコ、アキモ、ヤツメ、リゲル。あと君とサフン。一応カルキノスのアクベスもか」


海勢四天王のうち3人はだいぶボロボロ。クロムはまだ戦えそうだが…それでもあのウネリツノには届かないだろう。コケコ、アキモ、ヤツメ、リゲルは流石にダメ。ウネリツノが何を隠し持っているかわからない今、不用意に彼らを出すのはあまりにも危険すぎる。アクベスはそれなりに戦えると思うけど…


「ゴシャー?」


「彼ら以外にままだまだいる…???」


「アレですわよ!ほら、えと…そう、キジクジャクとベガですわ!」


「一瞬名前忘れかけてたよな」


キジクジャクとベガか。確かに、空勢も戦力としては数えられる。だが…彼らでどうするつもりなんだ、ベガの風の刃でチクチクするつもりか?悪夢クラーケンならともかく、ウネリツノ相手だと多分逃げられると思うけど…


「ゴシャ」


飛行勢を使うのは合ってるらしい。だが、もうひとりいる…??それは流石に嘘だよ。


「あ、わかったわ。彼よ、ファルドくん」


「ファ」


あ、ファルドのことをすっかり忘れていた。ごめんなさい、魔物使い引退します。





「いでよファルド!」


「「「シャー!」」」


さっきの場所から一番近くにあった島の浜辺にファルドを出した。まあ…一番近いといっても、それなりに離れているのだが…


「キジクジャクかベガでウネリツノをこの浜辺の近くまで誘導して、ファルドとやり合わせると」


「ゴシャ」


確かに同じ三怪物であるチハイザメさんはファルドとタイマンして倒されたし、その作戦は有効にみえる。もっとも…チハイザメは三怪物最弱なのに対して、ウネリツノは三怪物最強と言われている。なので不安は残るが。


「まあ傷ついてた仲間もそこそこ回復してたし大丈夫だろう。これでもダメなら今度こそ撤退する」


これで無理ならそれこそ神鯨を乱獲して神鯨艦隊とかでも作らない限り無理かもしれない。


「クェ」


俺はベガに乗ってウネリツノをここまで誘導することにした。耐久力や素早さを考えるとキジクジャクの方がいいのだが…風の刃でウネリツノを挑発できることを考えたら、ベガの方が適任であるとなった。


「あ、まだそこにいたのか」


サフンが唱えた素早さ上昇魔法や防御力増加魔法により強化されたベガに乗り、ティルの指示を聞きながら上空から探していたらすぐにウネリツノを見つけることができた。まだ悪夢クラーケンの残骸を貪っている。怖い。


「ベガさん、やっておしまい!」


「クェー!」


俺の指示を聞いたベガが翼をばたつかせ風の刃を生み出した!三つに分かれたその刃がウネリツノを襲う!


「dpmgwgdtjgd」


ウネリツノは赤く澱んだ目をギョロリとこちらに向け睨んだ。風の刃は鎧などの防御を貫通して攻撃することができる…だが、水の中に入り威力はかなり落ちているようだ。ウネリツノも負けじと反撃してきた!


「クェ!?」

「ぐぉっぷ!?」


ウネリツノはイルカも真っ青な大ジャンプをして俺たちを海に引き摺り込もうとしてきた!そこそこ高いところにいるはずなのに、普通にジャンプで届くのかよ…


「長居は無用、はやく誘導するぞ」

「クェ」


黒の装甲に包まれたウネリツノが、血眼になり俺たちを八つ裂きにしようと追跡する!

こうして、ウネリツノとの生死を賭けた地獄の追いかけっこが始まったのである。







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魔物と共にこの過酷な世界を生きる。 やまたのおろち @yamata55

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