第18話 第一王子殿下はマイラと間違えて地味ダサ女にキスしたと聞いて私はホッとしました

地味ダサ女はヴィルタネンの髪の毛を水流でほとんど抜いてしまったとか訳の判らない事で慌てていたが、そんなのカツラに決まっているでしょ!


髪の毛がないと知ったヴィルタネンの慌てようは笑えたが……


「これはどういう事ですか?」

そこにペトラが現れたのだ。

ペトラを見た瞬間地味ダサ女が真っ青になってくれて、それはそれで笑えた。


「本来ならばこの子は絶対に水魔術など使えるわけは無いのです。この生徒は何か誤魔化しをしたのです。神聖な魔法適性検査で誤魔化しをするなど許されることではないかと」

ヴィルタネンが、必死に言うが、


「ニーナさん。貴方は適性検査で誤魔化しをしたのですか?」

「そんなのしていません」

地味ダサ女は思いっきり首を振った。


そうだ。絶対にこの地味ダサ女は何もしていない、というか出来るわけ無いのだ。そんな事を出来る力もコネもないはずだ。絶対に誰かが邪魔したのだ。それは誰だ?


「ペトラ先生!」

その時に後ろの方から大きな声がした。

そこにはピンクの髪の女の腕を握った私の王子様が立っていた。


その横の女は誰だとわたしがあぜんとするくらいその女はきれいで、その女は地味ダサ女に比べると月とスッポンだった。


でも、いくらきれいでも、私の比ではない。

そもそも私の王子様に、ヒロインの私を差し置いて腕を摑まれるなんて、絶対に許せない。


「彼女が話したいことがあるそうです」

「ちょっと殿下、何言ってくれているんですか」

女は逃げようとして、皆に見られているのを知ると愛想笑いをした。


そのまま王子様にぐんぐん引っ張られて女の人は連れて来られたんだけど。

そんな女は突き飛ばして皆で足蹴にしましょうと私は思わず言いたくなった。


「カーリナ魔法師団長」

誰かが叫んでいた。

なるほど、こいつが魔法師団長か? でもそんな奴が何故ここに?


そんなやつはゲームには名前さえ出てこなかった。


犯人はこいつか? こいつが地味ダサ女の魔法適性を改ざんしたのだ。でも、何故?


なぜ地味ダサ女の魔法適性を改ざんする必要があるのよ!

こんな地味ダサ女をそこまでする必要はないだろう。

私には良く判らなかった。


「で、今回の適性検査の件、どうなっているのですか」

ペトラが聞いてくれた。


「えっ、何の話ですか」

「判っていますよね。カーリナ」

ペトラはカリーナを鋭い視線で見た。

「そう、どうしてこうなったか、俺も知りたいんだが」

横で王子様も言ってくれた。


そうか、良かった。この件は第一王子殿下の預かり知らないところで行われたようだ。


でも、何故王宮魔法師が出てくるのよ?

私はそこが気になった。本来地味ダサ女なんて相手にもされないはずなのだ。


「いや、これも色々ありまして」

魔法師団長は愛想笑いして誤魔化そうとしたが、


「カーリナ。最近魔法士の礼儀作法がなっていないと王宮から文句が上がっているのです。なんでしたら、礼儀作法の補講を」

「いや、先生。それだけはやめてください」

そう言うとカリーナはペトラと私の王子様の腕を引っ張ったのだ。


私の王子様にさわるなと私は叫びたかった。

そして、端で小さな声で色々と説明している。


「だから仕方がなかったんです。すみません。見逃してください」

平身低頭ペトラに謝っているんだけど。


余程ペトラが苦手と見えた。


「少し、検査紙におかしいのが混じっていたみたいで、なんかいろいろ皆さんにご迷惑をおかけしたみたいで」

そう言ってカリーナは、皆に愛想笑いすると風魔法の一つ温風魔法をずぶ濡れの皆にかけて一瞬で乾かせたのだ。


「では、そういう事で」

「ちょっと!」

「カリーナ!」

ペトラと王子様の声を無視して魔法師団長は皆に手を振ると一瞬で消えてしまったのだ。


ブツブツ文句をペトラは言っていたが、仕方がないと諦めたみたいだ。


「はい、では続きをしてください」

私はそのドサクサに紛れて、水魔法の先生から渡された紙を検査液につけて、水魔法のクラス分けになったのだ。


それが終わってホッとして周りを見渡すと私の王子様と地味ダサ女がいなくなっていたのだ。


別室で二人で何か話しているみたいだ。

もう許さない。絶対に地味ダサ女はしめる! 私はいきり立ったのだ。


でも、出てきた地味ダサ女はウィルとかいう者に王子様が手紙を渡してくれることになったととてもご満悦だった。


キスはどうなったと聞くと図書館で王子様が寝ていたので近づいたら、近付くなと私は叫びたかったが、マイラ様とかいうものと間違えてキスされたんだそうだ。


それで王子様が謝りに来ていたとか……間違いでも私もキスされたかった……


こんなんだったら、家に帰るのではなかった。私が先に図書館に行けばよかったのだ。

私はとても後悔した。


マイラ・カンガサラ、私達と同い年で、侯爵家の娘だ。


今は病気で自宅療養しているはずだった。

マイラと王子様は幼馴染のはずだった。


でも、彼女を好きなのはアスモのはずなんだけど……何故王子様が間違えてキスしたんだろう?

 

幼馴染で昔よくキスとかしていたんだろうか? 私は全然知らなかった。


私の王子様に間違えてキスされるなんてマイラとかいう女も私としては許せなかった。



まあ、いい。


マイラはこの後、天罰を受けるのだ。


確かゲームではもうじき病気で死ぬはずだった。


何しろ、アスモルートではヒロインは、好きなマイラが死んで落ち込んでいるアスモの心に浸け込んで親しくなっていくのだから……

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ここまで読んで頂いて有難うございます。

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