第40話 氷の貴公子に捕まってしまいました

私はやっと念願の聖女に成れた。


遅かったけれど。


地味ダサ女から遅れること二週間くらいで。


でも、聖女に成りたかった時に全くダメだったから、どうしようもなかったけれど。


王子様の命を助けるために発動したんじゃなくて、自分の命を助けるために聖女に成れたって言うところも本当にどうしようもなかった。


あの後、気を失った私を見て、日頃冷酷無比、沈着冷静なアクセリが冷静さを失って、大騒ぎをして、私を自分の屋敷に連れていったのだそうだ。


信じられないけれど。


そして、私を自ら夜通し看病してくれたそうだ。


それをベッドの中で聞いた私は驚愕した。


あとが怖い。絶対に今回の借りは高く付きそうだ。


なんか一生涯傍にいてくれと言われたような気がするし、一生涯アクセリの雑用をさせられるのは嫌だ。


私はもっといたらいいというアクセリの言葉を丁重に断って学園に帰ったのだった。


本当に侯爵家にいる間はアクセリが至れり尽くせりいろんなことをやってくれたんだけど。


私の額の汗を拭いてくれようとするわ、私にご飯を食べさせようとするわ……


怖くなった私は3日で無理やり元気になって無事に学園に帰ったんだけど……


その私を襲った悪役令嬢のサデニエミ公爵家は聖女襲撃と領地の不正が暴かれて現在処分待ちの状態だ。お取りつぶしは間違いないだろう。



そして、テスト勉強のさなか、私は学年末のサマーパーティーの衣装の確認のために実家に帰ったんだけど、置いてあった衣装が違ったのだ。

慌てて、父の書斎に行くと


「お父様、私シルバーの衣装だったと思うんだけどなんでブラウンの衣装になっているの? それも青い飾りがいっぱい入っているんだけど」

扉を開けて私が文句を言うと、


「いや、ライラ嬢、気に入らなかったのか、私が贈らせてもらったのだが」

そこにはいるわけのないアクセリが父の前に座っていたのだ。


「えっ? アクセリ様」

私は訳が判らなかった。


「ライラ、アクセリ様がわざわざお前の為に贈って頂いたのだよ」

「そうよ、ライラ。この前おまえを傷付けたお詫びだと言われて」

「ライラ嬢。私の注意不足で君をあのような目に会わせて本当に申し訳なかった。責任はすべて取るから」


ええええ!

なんか訳の分からないことをアクセリが言っているんだけど。


まあ、もらえるものはもらっておくけれど、ブラウンは私の髪の色でもあるけれど、アクセリの瞳の色でもあるのだけれど。


これはまずくないか……でも両親がとてもうれしそうにしている。


そう言えば、侯爵家でもアクセリのお母さまに、

「こんなきれいな子をアクセリが連れて帰ってくるなんて思ってもいなかった。本当に嬉しいわ」

とか言われていたけれど、これってとてもまずくない?


なんか外堀からすべて埋められているような気がするんだけど……私の気のせいか?




そして、サマーパーティー当日、私はブラウンのタキシードに緑のネクタイをしたアクセリにエスコートされているんだけど。

ちょっと完全におそろいのペアルックじゃない。私の飾りの青はアクセリの髪の色だし、緑のネクタイは私の瞳の色なんだけど……


みんな、私達を見て一瞬ギョッとした顔になって、その後、生暖かい視線になるんだけど……


いや、ちょっと待って、これって監禁バッドエンドなんじゃ……


いや、でも私は聖女になったし、アクセリは闇落ちしていない。

大丈夫なはずなんだけど。


でも、攻略対象のアスモは元気になったマイラと仲良くやっているそうだ。

私の王子様はあろうことか地味ダサ女に公開プロポーズしていた。頼りない第二王子はいるはずだが姿も見えない。とするとヒロインである私に残っているのは今一緒に踊っているアクセリだけなんだけど……


「ライラ嬢、申し訳ないけれど、また、侯爵家に来てくれるかな。この前会ってもらったけれど、婚約者を両親に正式に紹介したいし」

さらりとアクセリがとんでもないことを言ってくれた。


「はいっ?」

私は一瞬固まってしまった。

「婚約者?」


「何を驚いているんだ。この前、私が君を一生涯守り切ってみせるって言ったら頷いてくれたじゃないか」


ええええ! あれって、プロポーズだったの? 

そんなの聞いていないわよ!

それに私の気持ちだけで婚約は決まらないはずだ。


「まあ、もっとも君が嫌だって言ってもうちの両親と君の両親の了承ももう得ているから今更変更しようもないけれど」

腹黒そうな笑みを浮かべてアクセリは言ってくれるんだけど……


ええええ! もう侯爵様もうちの両親も了解しているってこと。


ちょっと待ってよ。私のいないところで何やってくれているのよ。


「という事でこれから一生涯よろしくね」

「いや、ちょっとアクセリ様……」

不敵な笑みを浮かべたアクセリは文句を言おうとした私の唇を強引に塞いでくれたのだ。


うっそーーーーキスされている。


それもこんなところでやめてよ!

しかし私がもがいたところで強引に私を抱きしめたアクセリの手から逃れる事は出来なかった。



「キャッ」

「凄い!」

「氷の貴公子がキスしている」

私達を見てみんな黄色い悲鳴を上げてくれた。



やっと口をアクセリが解放してくれたときは恥ずかしいやら息が続かないやらで私はもう疲労困憊で騒ぎ立てる元気もなくなっていた。


というか、もう絶対に断れないじゃない!


いや、でも、まだ何か手は……無かった。


この後、私は公私ともどもアクセリと一緒に一生涯過ごす羽目になったのだった。




おしまい


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ここまで読んで頂いて有難うございました。


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転生したヒロインのはずなのに地味ダサ令嬢に脇役に追いやられてしまいました 古里(furusato) @furusato6

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