第39話 自分が死にそうになって初めて聖女になれました

「や、や、矢が胸に……」

私は一瞬何が起こったか判らなかった。


アクセリの指示通りにマントにフードを被って馬車に乗って移動していたのだ。なんでマントにフードに被って乗ったんだっけ?


私自身、地味ダサ女が大聖女になったとショックを受けた後だったから、よく意味が判らなかったけれど……私、ひょっとして地味ダサ女に化けた囮だった。


ショックのあまり、何も聞いていなかった気がする。


ひょっとしてアクセリの計画では、私を囮にして、最悪私が死んでも良いと思っていた? あの腹黒なら、十分やりかねない。


でも、囮にされた方ではたまったものではなかった。

私はアクセリの策略にかかって、悪役令嬢の手の者にかかってここで殺されるの?


嘘! アクセリに裏切られて、殺されるの?


私はとてもショックを受けているのを知った。


今までアクセリは監禁バッドエンドがあるので、できる限り避けていた。

でも、アクセリはそんな私を気遣ってくれていると思っていたのだ。


王子様に振られたショックで家で呆然としていた時もわざわざ迎えに来てくれたのだ。

いつも私には優しい言葉をかけてくれていたし。


私はそれがとても嬉しかった。


でも、それは私がアクセリにとって都合の良い女であったからかもしれない。


そう、それもこれも全て私をここで悪役令嬢に地味ダサ女と間違えて殺させるために最初から仕組んでいたというの!


私はショックの余り何も言えなかった。

というか、もろに矢が刺さって激痛がしているし、もう、このままでは私は確実に死ぬ。


そんな、このゲームのヒロインがこんなところでのたれ死ぬの?


私は激痛に苦しみながらも止まっていた馬車から転がり落ちた。

外では騎士たちが戦っていたが、圧倒的に劣勢だった。


もうここで死ぬしかない。

私に対して、別の破落戸が斬りかかってきた。

も私には躱せない。もう、終わったと思ったときだ。

「凍れ!」

大声がして、私に斬りかかろうとした破落戸が一瞬で凍ってしまった。


「ライラ、どうしたんだ!」

慌てて、アクセリがかけてきたんだけど。

次々に破落戸どもが襲ってくるんだけど

「どけーーーーー!」

アクセリが叫ぶと破落戸どもは一瞬で凍った。

私達を襲っていた破落戸共が反撃をするまもなく次々に凍っていくんだけど。


「ライラ!」

大声を上げてアクセリが飛んできてくれた。

「すまん、ここでいきなり矢で貫くなど想定もしていなかったのだ」

そう叫ぶと私を抱きしめてくれたんだけど。


「大丈夫か? ただちに医者を、いや、ニーナを連れてこい」

「いやそれは無理だろう」

「何を言っている。貴様がこんな無茶な作戦を立てたんだろうが」

「いや、俺もまさかこんなことになるなんて。すぐに治療師が来る」

「普通の治療死で治せるのか」

なんかアクセリと王子様が言い争っている声が聞こえるんだけど。


「うっ」

また血を吐いた。もう終わりだ。

その私をアクセリが抱いてくれている。


「ライラ! 死ぬなよ。お前にはずっと私の側にいてもらうんだから」

「アクセリ様。もう、無理です」

私はアクセリを見た。

この慌てようを見ると、一応私を殺す予定はなかったみたいだ。私はほっとした。


「何を言っているんだ。すぐに助けが来る」

「もう間に合いません」

「いや、後少し我慢しろ」

「アクセリ様。今までありがとうございました」

私は最後にアクセリにお礼を言った。


「何を言う、ライラ」

「アクセリ様」

私達は見つめ合った。


私はまだ生きたい。

この氷のような瞳をまだ見ていたい。


そう心から思ったのだ。


その時だ。


急に体の中が暖かくなった。


急速に私が光に包まれる。


これならいける。


「ヒール!」

私は最後の力を振り絞って叫んだのだ。


光が私の体を包むと矢が溶けて、傷がどんどん塞がっていったのだ。

私は自分が危機になって初めて聖女になれたのを理解した。


そして、力を使いすぎた私はアクセリの胸の中で気絶したのだった。


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ここまで読んで頂いて有難うございます。


このサイドストーリーの

『転生したら地味ダサ令嬢でしたが王子様に助けられて恋してしまいました』

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現在更新中です。

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始めました。

こちらも面白いとおすすめです。是非ともお読み下さい。

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