第4話 お昼休みに地味ダサ女と話してみて、私とは相容れないと判りました

お昼は騎士志望のヨーナスと嫌だけど、地味ダサ女と一緒に食べることにした。

だってこれからオリエンーションが同じなのだ。

こいつらにも頑張ってもらわないと。


新入生がこの学園に溶け込むことを目的にされるオリエンテーションにも当然イベントはある。

一番のイベントは借り物競争で異性の先輩を連れてくることだ。ここで連れてきた相手はこの夜に開かれる歓迎パーテイーでエスコートしてくれるのだ。


私はゲームを始めた時は必死に王子様を口説きに行ったのだ。


でも、王子様は

「ゴメンよ。僕は生徒会でこの会を運営しているから参加できないんだ」

の一点張りだったのだ。


何回やっても絶対にこの借り物競争では一緒に来てくれなかったのだ。

何十回もこのゲームをやった私だから言えるのだ。ここは王子を狙ってはいけない。


借り物競争で来てくれるのは二年生のアスモ・シュルヤラ伯爵令息。優しげな先輩だ。彼は生徒会もやっていて第一王子の側近だ。彼は親切な男でここで頼めば来てくれるのだ。

それともうひとりアクセリ・トウロネン侯爵令息。青髪の貴公子、先程私に嫌味を言ってくれたやつだ。彼にすると散々嫌味を言われて別に好感度に影響はない。

私は彼は嫌いなので、ここでは無視だ。


王子様を諦めたわけではないが、ここはアスモ一択だ。傍でエスコートしてもらえれば王子様と話せるかもしれない。何しろ彼は王子様の側近なのだから。


「でも、良かったわ。ライラがいて。王立学園ってお貴族様ばかりだったらどうしようって、私は心配していたのよ」

「…………」

地味ダサ令嬢が何か言ってくれている。


ちょっと待った。私ハナミ商会の娘だって言ったわよね。

ハナミ商会と言えば私の前世知識の助言で、無鉛のおしろいを開発して売り出して成功した、王都でも有数の商会なのだ。その家が男爵家なのも有名な話なのに、この子は知らないの?


「おい、ニーナ。おそらくライラは男爵家のご令嬢だぞ」

横からヨーナスが言ってくれた。そうそう、偶にはモブ以下の男もちゃんと仕事してくれる。


「ええええ! あなた、男爵様のご令嬢なの」

地味ダサ女はまじまじと私を見てくれるんだけど。


「何驚いているんだよ。ハナミ商会って言ったら王都でもやり手の商会で通っているぞ。当主の男爵様も気さくな方だって聞いているけれど、何故ライラはCクラスなんているんだ。お前だったら十分にBクラスには行けたと思うけれど」

ヨーナスが当然のことを言ってくれた。


BじゃなくてAだけどね。


見る人が見れば普通そうなのだ。


これはあまりにも私が順風満帆にゲームの世界を謳歌しているから、神様が与えてくれた試練なんだろうか?


「だって学園くらい自由に過ごしたいじゃない。Bクラスなんてなったら、仕事がらみで色々煩いかもしれないし、気を使わなきゃならないじゃない」

私はそう格好いい言い訳をしたのだ。


本当は許せないんだけど……


「ええええ! 雲の上の男爵様でも気を使うの?」

地味ダサ女が何か叫んでくれたんだけど。


「当たり前でしょ。男爵なんて貴族の中では底辺よ。男爵の1つ上に子爵があるけれど、子爵と男爵でも、天地雲泥の差があるのよ。伯爵様なんて言ったらはるか雲の上の人よ」

この女はひょっとして爵位の違いを知らないのか?


「そうなんだ。男爵様も伯爵様も私からしたら雲の上の方だから、皆同じかと思っていたわ」

「全然違うわよ。その上の侯爵様や公爵様はもうお空の先のお星さまだからね」

「そうなんだ?」

私の説明にわかったかわからないかのような顔をしてくれるんだけど。こいつはやっぱり馬鹿なんだろうな!


私はそう決めつけたのだ


「私の領地の領主様は男爵様だったんだけど、ライラも同じということよね。じゃあ、ライラ様って呼んだほうが良い?」

そう、やっと地味ダサ女が言ってくれたのだ。

当然だ。私は鷹揚に頷こうと思ったのだ。


でも待てよ。

私の王子様は挨拶で学園にいる間は地位も爵位も忘れて勉学に励んで欲しいと言っていた。


将来的な事を考えても、基本的には男爵の娘の私が殿下の横に立つのは爵位が低すぎるのだ。


ゲームでも、ライラは皆に等しく接していた。


確かAクラスにも一人だけ平民がいたはずだ。その子にも平等に接していたのだ。


それが王子殿下が私を認めてくれる理由の一つになったはずなのだ。

後悪役令嬢が私を虐めてくれたというのもあるんだけど。

貴族至上主義の悪役令嬢とちゃんと区別がつくようにしないといけないだろう。


「止めてよ。学園長や生徒会長の前で平然と居眠りするあなたに様付けで呼ばれたら、私が目立って仕方がないじゃない」

私は後々のことも考えて、そう言ったのだ。

心では平民風情が私を呼び捨てにするなと思いながら……


私は心にもないことを言いながらとても自己嫌悪に陥った。


「何言っているのよ。私、見た目はとても地味で大人しいのよ」

「「誰がよ(だ)!」」

私達は心の底からそう言った。こいつが地味で大人しかったら私はなんて言えばよいの? 

まあ、見た目はとても地味だけど、この女はやることはクラス一、いや違う学園一目立っているのだ。


「だって、地元では皆に虐められて泣いていたんだから」

更に何かほざいてくれるんだけど……


「そんな訳無いでしょう」

「そうだ。絶対に泣かせていたほうだ」

私は珍しく平民のヨーナスと意見があったのだ。

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この話の地味ダサ令嬢ニーナ主人公の物語はこちら

https://kakuyomu.jp/works/16817330667785316908


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