第5話 地味ダサ女はゲーム上では不可能だった王子様にエスコートされることになりました

「中庭だ!」

昼休みが終わっていきなりオリエンテーションが始まった。

先頭のヨーナスの引いた札には中庭とデカデカと書かれていた。

ええええ! ゲームをやり込んだ私には判ったのだ。


これはいきなり借り物競争だ。


「よし、行こう」

「こっちだ! 黒髪、遅れるなよ」

「私はニーナだって言うのに」

後ろの赤髪を地味ダサ令嬢が追いかけるんだけど。


「ちょっと待ってよ」

そんなに急いだら、ペトラ先生に見つかったら一回休みになるんだから!


私はゲームでは焦って走ると何回かペトラ先生に捕まってしまったのだ。

そして、捕まった後に中庭に行って、必死に攻略対象を探しても誰一人残っていないのだ。


私が危惧していると

「おい、校舎内は走るのは禁止だぞ」

誰かの注意する声が聞こえた。


だから言わんこっちゃないのに! 


でも、あの声は……


ええええ! 私の王子様だ。


私が階段を見るとそこには見目麗しい王子様がいたのだ。



ゲームでは王子様に注意されるなんて事は無かったのに!


「お疲れさまです」

私は王子様に追いついた時に声をかけたのだが、王子様は私なんか目にもくれていなかった。


「怪我をするなよ」

王子様は私なんか全然見てくれないで、先を走りそうになる地味ダサ女に声かけてくれるんだけど。

ちょっと待ってよ! 私、ヒロインなんですけれど!


私がさらに声をかけようとしたら、何故か王子様も階段を駆け下りていったんだけど……


「走っては行けないって言ってなかったっけ?」

横のハッリとかに言ったら

「さあ?」

と肩を竦められたのだ。


本当にこのゲーム、ヒロインは私なんだろうか?



中庭に降りて周りを見ると、端で生徒会長らの集団が何か相談しているのが見えた。

そして、アスモ様も。


「遅い!」

私は地味ダサ女に注意されるんだけど、平民女が男爵家の令嬢に注意するなよと思いながら、


「あなたが早すぎるのよ!」

流石の心の広い私も文句を言った。


「異性の先輩を各自一人連れて来ること。隣の校舎に入っても良いって書かれているわ」

地味ダサ女が紙に書かれた文章を読む。


私はその声を聞いて、皆が気付かないうちに、ゆっくりと生徒会の面々の所に近づいたのだ。


王子様は私をちらっと見ると俺に構うなモード全開で隣と話ている。


私はため息を付きたくなった。私がヒロインなのに、何なのよ。その態度は!


まあ、ゲームでも基本王子様はそんな感じだった。


それを入学式の前に迷って王子に入り口まで送ってもらって知り合って、入学式の祝辞の時に気絶して王子様に保健室に運ばれて、徐々に関係を深めていくはずだったのだ。


そうしていれば今頃は手くらい振ってくれたはずなのに!

たとえそれが無理でも少しは私を見てくれるはずだったのだ。



でも、ここは予定通りにアスモ様に後ろから声をかけようとした時だ。


「居た!」

大声が響いて、ダダダダという足音とともに地味ダサ女が飛んできたのだ。


アスモ様は渡さないわよと断ろうとした時だ。


女は全く私達には一顧だにせずに、王子様に突撃したのだ。


無理だって!


私が思わず教えてあげようとした時だ。


「先輩、お願いします。一緒に来てください!」

地味ダサ女は王子様に頼んでいたのだ。王子が近寄ってくる女に拒否反応を示すのは有名な話で、生徒会の面々は呆れてみていた。


「えっ? 俺? いや、俺は実は運営で……」

「紙には運営は除くとは一言も書いて無かったです」

戸惑う王子様に地味ダサ令嬢は言い切ったのだ。


「生徒会長、すぐに終わるので、少しだけ、お願いします」

地味ダサ令嬢は今度は王子様を拝み倒しているんだけど。


そんなので女嫌いの王子様がついてきてくれる訳はないじゃない


私は馬鹿にしたように笑って見ていた。


しかしだ。その瞬間に地味ダサ令嬢は強引に王子様の手を引いて、駆け出したのだ。


ええええ! 

「あの子なにやっているのよ。殿下は強引な女はお嫌いなのに」

生徒会の面々も怒られる地味ダサ令嬢が目に浮かんだんだろう。

私と一緒に可哀想な女を哀れんでみていた。


「いや、ちょっと……」

「中庭は駆けても良いですよね」

地味ダサ令嬢が怒ろうとした王子様に叫ぶと、何と王子様は仕方無さそうに一緒に走って行くんだけど。


嘘! あそこまで強引にやれば王子様は来てくれたの?


私は信じられない者を見ていたのだ。

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ショックを受けたライラでした

続きは明朝

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