第34話 地味ダサ女に付き合って王子様を起こそうとしたら間違えて氷の侯爵令息の部屋の窓ガラスを割ってくれました。
バシンッ
私は頬を引っ叩かれていた。
平民の地味ダサ女に!
親にさえ前世も含めて張られたことなんて無いのに!
私の頭は真っ白になった。
「何言っているのよ。ライラ。病気で苦しんでいる人がいるのにそれをほっておくことは出来ないわ」
何か格好つけて地味ダサ女が言ってくれる。
「な、何してくれるのよ。あんたも今まで放っていたじゃない。それを棚に上げて人をぶつわけ?」
私は完全に頭にきていたのだ。
「煩いわね。つべこべ言わずにすぐにマイラ様の所に案内しなさい」
しかし、地味ダサ女は、今まで私に逆らったことがなかった……いや、確かにいつも私の思い通りにはならずに、余計なことばっかりして、私の王子様は取ってくれたが、私に面と向かって逆らったことはなかったのだ。
それがいきなり、私を引っ叩いてその上胸ぐらを掴んできたのだ。
ぐいっと。
私は次の瞬間には宙に浮いていた。
ウッソ。こいつこんな馬鹿力があったんだ。
私は抵抗できなかった。
「よーーーーく聞きなさい。
私はね。前世は病弱でずうーっとベッドで苦しんでいたのよ。病気で苦しんでいる人がいたらそれを助けるのは当然じゃない! 判った?」
私は地味ダサ女の迫力に負けてしまったのだ。
思わず頷いてしまったのだ。
なんで、あんな地味ダサ女の言うことを聞いてしまったのか良く判らない。
おそらく、その腕力と迫力にに負けてしまったのだと思う。
「今すぐにマイラ様を助けに行くわ。まず、会長の所に連れていきなさい」
「な、なんで殿下なの」
「だってマイラ様は殿下の想い人でしょ。そのマイラ様が苦しんでいるのに、のほほんと寝ている暇なんて会長にはないわ」
なんか地味ダサ女はとんでもない意見を言い出すんだけど。
しかし、今からいくら努力したところで、ゲームでは基本的にマイラは死んでしまうのだ。
こればかりはどうしようもないと思う。
聖女には病を治せる力はなかったはずなのだ。
こいつは何をしようと言うのだろう?
それに、そのマイラの死で一番ショックを受けたのはアスモで、王子様自信は悲しんだとは思うけれど、そこまでではなかったと思う。
だって王子様との会話の中でマイラの話が出たことは殆どなかったもの。
私としては、地味ダサ女の心に病弱の恋人を寝取った酷いやつだと傷を負わせれば良かったわけで、助けに行くなんて展開は予想もしていなかった。
こいつは聖女になれたからって、おごり高ぶって、病に癒やし魔法が効くなんて思っているんだろうか? ひょっとして癒やし魔法が病に効かないのを知らないのか?
その可能性も十分にあった。
そうか、それならばこいつにやらせてみて、勇んで行ってみて、何も出来ませんでしたと恥をかかすのも良いかもしれない。
その後、「嘘つき聖女」という二つ名をつけられて皆に呼ばれるのだ。
そうすれば、こいつを引きずり下ろせる可能性も出てくるかもしれない。
これはチャンスだ!
私は面白そうなので、そのままやらせることにしたのだ。
「ライラ、本当にあの窓なの」
地味ダサ女が聞いてきた。会長の部屋を教えろと言うから、男子寮の最上階の一番上の右端だと教えてやったのだ。
「確かよ。ゲームで殿下の窓に石をぶつけるというシーンがあって、よく覚えているのよ」
私は言ってやったのだ。
「なにそれ、ロミオとジュリエットじゃないのよ」
馬鹿にしたように地味ダサ女が言ってくれるんだけど、そんなの私の知ったことではないわよ。
「知らないわよ。ゲーム作者がやってみたかったんじゃないの? でも間違えて左の窓に当てたらダメよ。隣はアクセリ様だから」
私は一応注意をしてやったのだ。
「えっ」
でも、この地味ダサ女は何をトチ狂ったのかそのアクセリの窓にドンピシャ石を当てたんだけど。
バリン
アクセリの窓ガラスを割って石が中に入っていった。
「やばい」
「何やっているのよ」
私は逃げるが勝ちと駆け出した。怒られるのは地味ダサ女一人で良いはずだ。
しかしだ。
ドン!
「痛い」
しかし、ものの二三歩も行かないところで、私は男にぶつかってしまったのだ。
よろけそうになった私はぶつかった男に抱きかかえられた。
「何をしているのかな? ニーナ嬢」
その男は私を胸に抱えて、石を投げた地味ダサ女に向かって怒っていたんだけど。
ええええ!
なんと、そこには怒っているアクセリが立っていたのだ。
ちょっと待ってよ。今、窓ガラスを割ったところなのに、なんでアクセリがここにいるのよ!
私は盛大に心の悲鳴を上げていたのだ。
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ここまで読んで頂いて有難うございます。
このサイドストーリーの
『転生したら地味ダサ令嬢でしたが王子様に助けられて恋してしまいました』
https://kakuyomu.jp/works/16817330668268458339
まだの方はぜひともお読み下さい。
この話も後少しで完結の予定です。
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