第27話 ダンジョン体験でせっかく王子様の隣が空いたのに、氷の貴公子に仕事を命ぜられて連れ出されてしまいました

私は、私の王子様と一緒になって、散々地味ダサ女を虐めた、いやいや叱責したのだ。


日頃の恨みというか、私が王子様が好きだと言ったにも関わらず、私を裏切って王子様と仲良くしてくれた恨みだ。


その叱責も、いかにも本人の為と装って、地味ダサ女の事を散々貶めてやったのだ。


王子様が知ると怒ることも色々バラして上げたのだ。


ざまあみろだ!



王子様も私から焚き付けられて、怒りが更にヒートアップして、叱責していた。


これで私と王子様は地味ダサ女を叱責した仲間になった。


地味ダサ女は王子様と私を恨みがましそうに見ていたけれど、もっと恨め。

出来たら王子様も恨んでほしい。

そして、嫌いになってくれたほうが余程嬉しい!


何しろダンジョン体験では、傷ついた王子様を聖女の力が覚醒した私が救うのだ。そして、私と王子様の愛が生まれるのだから!



学園は、王子様が注意してくれたこともあって、私へのイジメは影を潜め、次の行事、ダンジョン探検一色になっていた。


今回の行事も学園と生徒会の合同だ。


会議室での拡大会議には各クラスの生徒会委員と委員長、副委員長が呼ばれて開かれたのだ。


当然私は地味ダサ女と騎士志望の男ヨーナスとガリ勉男ハッリと一緒に参加したのだ。


地味ダサ女が一緒に座ろうとしたが、

「ごめん。私は仕事が割り振られているの」

そう言って、私は悠然と前の席に移ったのだ。


本来ならば優越感に浸れるはずなのに、執着男のアクセリの隣だから全然嬉しくない。


ガリ勉男のハッリが「僕も手伝いましょう」

と申し出てくれて、私はハッリに代わろうとしたのだ。


しかし、

「まあ、テモネン君はまだ、生徒会に慣れていないだろう。ライラ君はニーナ嬢の事件の時から私を手伝ってくれているから私のやり方に慣れているから……」

とか言うとんでも意見で却下されてしまったのだ。

ハッリは私を睨んできたんだけど……


いやいやいやいや、私は絶対に代わりたかったのに!


お前がもっとうまく言わないからだろう。

私は声を大にして言いたかった。


「ダンジョンには初級の魔物しかいないはずなので問題ないと思うが、各クラスは八班に分けてほしい。基本は3っつの班を一グループにして行動する。三年生の一班と二年生の一班と一年生の一班を一緒にして三班で一つのグルーブとする予定だ。グループ分けはまた指示するので、取り急ぎ各クラスで班分けしてそれを報告してほしい」

アクせりは次々に指示してくる。


基本生徒会の私しか知らない情報だが、グループ分けは我が一年C組は王子様の三年A組と二年B組と組むのは決まっていた。


今回は癒やし魔術の魔法師は二人しかおらず、三年生のB組とC組に付いていく。

ということで我がグループにはいないのだ。


私はアクセリの下にいるのでそれを当然知っていた。

「第一王子殿下がいらっしゃるのに癒やし魔法師がいなくて宜しいのですか?」

私は一応アクセリに聞いたのだ。


「まあ、一番魔力の多い三年A組がいるのだ。大方の魔物は既に退治されているし、本来は癒やし魔法師なんていらないのだが、念には念を入れて付いてきてもらっているのだ。問題ないだろう」

アクせりは当然のように言ってくれた。


まあ、普通はそうなのだ。

普通は。


でも、ここで悪役令嬢が絡んでくる。


ゲームでは第一王子殿下と仲良くしているヒロインを始末するために、悪役令嬢が魔物を放つのだ。

しかし、王子様はヒロインを襲おうとした魔物の盾になって瀕死の重傷を負うのだ。


その危機にヒロインの聖女能力が発現し、王子様の傷を聖女になったヒロインが救って恋に落ちるのがこのゲームの山場なのだ。


そうか、ゲームでは語られていなかったが、癒やし魔法師は王子様の所にいなかったのだ。

だからヒロインが聖女として発現するのか。私は知らなかったゲームの細かいところが判った。



チームは私の思惑通りに私達の一班は王子様と同じチームになった。


私は準備の間中アクセリの下働きをさせられていて、本当に大変だった。

まあ、その分王子様と同じ班になるようにアクセリを仕向けることも出来たし良しとしよう。

でも、アクセリの雑用は本当に大変だったのだ。



そして、ダンジョンは王都から馬車で8時間の所にあった。


それも荷馬車での移動だ。


私は日頃、馬車の移動は慣れていたが、荷馬車の移動は初めてだった。

こんなに揺れるとは思ってもいなかったのだ。


「もう痛い」

「最低」

「なんて私達がこんな荷馬車なんかで移動しなくちゃいけないのよ」

私も貴族の令嬢達と一緒に文句を言っていた。


「だめ、ニーナ、もうお尻痛くて立てない」

流石の私も悲鳴を上げていた。


「ちょっと、ニーナ、肩化してよ。本当に痛いんだから」

私は地味ダサ女の肩を借りて歩き出した。


しかしだ。お目当ての人物を見つけた途端尻の痛みも無くなった。


「殿下、すみません。火を起こして頂いて。私が手伝います」

私は殿下に駆け寄って話しだしたのだ。


「やあ、ライラ嬢。荷馬車の旅は大変だっただろう」

「そんな事ありませんわ。あれっくらい。騎士の皆様のいつもの苦労に比べれば全然大したことはありませんもの」

何か文句を言いそうな地味ダサ女の足を踏んでやった。


「良い? あなたはウィル様狙いなのよね。私は殿下命なの。だから、アンタは絶対に私の邪魔しないでね」

私は地味ダサ女を端に連れて行って言い放ったのだ。地味ダサ女も頷いてくれた。

よし、これで私の王子様とゆっくり話せる。私は喜んだ。


そこへだ!

「ライラ嬢、良いところに来た。皆に配る地図を少し修正しなければならなくなってね。手伝ってくれるか」

「えっ、アクセリ様。手伝いならニーナがいますけれど」

嫌そうな顔をして私が地味ダサ女に振ろうとした。


「えっ、私ですか」

「ニーナ!」

私は地味ダサ女に頼むからやってと言葉の外にお願いオーラ満載で頼んだんだけど、


「ライラ嬢。私の仕事はとても重要なのだよ。ニーナ嬢が地図に書き間違えて、遭難者が出たらどうする気だ」

アクセリが言ってくれた。

アクせりの言うことは間違いないけれど、せっかく王子様と一緒に仕事しているのに……


「それはそうだ」

王子様まで頷いてくれた。


「ライラ嬢。頼むよ」

「えっ、そうですか」

王子様に頼まれたら仕方がなかった。


私は泣く泣く王子様の隣の席を離れて鬼畜なアクセリに連れて行かれたのだ。


屠殺場に連れて行かれる牛の気分だった。


そして、目の前に積まれた修正書類の多さに、気が遠くなったのだった。

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