第13話 寮の部屋で地味ダサ女を脅しました
そして、女子寮であの不届き者の地味ダサ女を待ち構えていたのだ。
どうやって料理しようかといろんな策を練りながら。
「どうだったの? 殿下は」
帰ってきた、地味ダサ女を自分の部屋に連れ込むと根掘り葉掘り聞きだしたのだ。
「えっ? 私、もう疲れて眠いんだけど……」
「何を言っているのよ! あんた、あの後、殿下を連れ出して二人して逃げてくれて、もう大変だったんだから」
逃げようとする地味ダサ女をベッドの上に座らせると、私は説明しだした。
怒りに狂った高位貴族の令嬢が雄叫びを上げていたとか、明日地味ダサ女を見つけたら皆でしめようと二年生が相談していたとかあること無いこと教えてやったのだ。
「あんた、明日から、気をつけて歩かないと、何をされるか判らないわよ」
周りの高位貴族の令嬢の怒りも凄まじいものがあったと脅しておく。
「えっ、本当に?」
さすがの地味ダサ女も青くなっていた。
ふんっ、ざまあみろだ。
それで王子様とどこに行ったか聞いたら、何と執務室に入ったというのだ。
「ええええ! あなた、殿下の執務室に入らせてもらえたの? 未だかつて生徒会の役員も女は一切立ち入り禁止だったのに」
私の怒り声が室内に響いた。
「何であなたはいれてもらえたのよ?」
本当に許せなかった。最初にヒロインの私が入れてもらえるはずだったのに。
「私が歓迎会の食べ物を食べられなかったって、文句を言ったからじゃない?」
「食べ物と執務室に入れるのとどう関係するのよ」
「会長はお腹を鳴らした私を憐れんで、執務室の戸棚から焼き菓子出してくれたのよ」
「ええええ! あなた、殿下と一緒にいたのに、お腹を減らして腹時計を鳴らしたの?」
こいつは信じられない。私の王子様と一緒にいてお腹が減るなんて、どんだけ食い意地が張っているんだ。
「だって仕方がないじゃない! お腹が減って勝手に鳴ったんだから」
「なるほど、殿下はあなたを見ていて、あまりにも可哀相になったのね」
そこまで変だから仕方無しに殿下は入れてくれたのだ。
そう言う手があったのか。私は感心した。
でも、愛する人の前でお腹を鳴らすって私には絶対に無理だ。
「今回は殿下が私を無理矢理引っ張っていったのよ。私がだいそれたことなんて出来るわけ無いじゃない。私は普通の大人しい平民なんだから!」
何か地味ダサ女がほざいていたが、
「良い? 普通は大人しい女の子は学内で一番注目されている殿下に近づいて借り物競争に参加してくださいなんて、口が裂けても言えないのよ」
「そんなのわからないじゃない。殿下がとても親切そうに見えたから話しかけられるかもしれないわよ」
地味ダサ女はの言葉に私は頭を押さえていた。
「まあ、そんな事どうでもいいわ。問題は何故か殿下があなたに興味を持ってしまったことよね」
「それはないんじゃない。殿下は私が無理やり頼んだから付き合ってくれただけよ。それ以上でもそれ以下でもないわ」
それに私は思いっきり頷きたかった。
こんな地味ダサ女に、殿下が興味を示す訳はないのだ。
「でも、殿下が今まで誰かをエスコートしたことはなかったのよ。あなたが初めてなのよ。殿下が誰かと踊ったのも初めてだってアスモ様が言っていたわ。
皆はあなたが踊ったから次は自分だと期待していたのに、あなたが殿下を連れて行ってしまったから本当に怒っていたのよ」
「だから連れて行ったのは私じゃなくて殿下でしょ!」
「あなたがそうそそのかしたんじゃないの?」
私はその点は切れていたのだ。
「唆してなんかいないわ。それにあの会長が私が言ったことを聞いてくれると思うの?」
「パーティーでエスコートしてくれたじゃない。いまだかつて誰もしてもらったことがないのに!」
「それは借り物競争で私に付いて来てくれたからで」
「その借り物競争ですら去年も皆断られているのよ。『俺は運営だから』って。でも、あんたには付いて来てくれたじゃない」
「確かに私には付いて来てくれたけれど、それは強引に私が誘ったからで……」
「まあ、確かにアンタの強引さは群を抜いているけれど」
「何よそれ」
「そんなアンタの変なところに興味を持ったんじゃない?」
「そんなわけは無いと」
「でも、殿下が無理矢理会場から連れ出したのよ。普通女から逃げるならば一人で逃げれば良いじゃない」
「私を置いておくと皆に虐められると哀れんでくれたんじゃないのかな」
「それはそうかもしれないけれど……」
王子様も逃げるならばこの地味ダサ女を置いていってほしかった。そうすれば皆で寄ってたかって虐めて逃げられた鬱憤は晴らせたのに!
そうすれば私も影で思いっきりこの地味ダサ女を蹴り上げることも出来たのだ。
今更、面と向かって殴りつけるわけにもいかない。
せっかく、王子様と踊るチャンスだったのに。
この地味ダサ女が一緒に逃げ出したおかげで、すべてのチャンスが無くなったのだ。
「それよりもライラ。ウィル様って見つかった?アスモ様とかにも聞いてくれたんでしょ」
地味ダサ女は強引に話題を変えてくれたが、
「ウィル様なんて、王子様の前には関係ないでしょ」
私はそんな男はどうでも良かった。
「そんな訳無いわよ。私には王子様よりもウィル様なんだから」
何か地味ダサ女が言ってくれているが、
「あんたね。皆、殿下に必死に近づこうとしている中で、近づけたただ一人の女が他の男の事気にする?」
「だって、私には別の銀河の王子様の事よりも私を助けてくれたウイル様の事の方が大切だもの」
地味ダサ女入ってくれるんだけど。
まあ、その方が私も楽なのだ。ライバルはひとり減るし、いやいや、こんな地味ダサ女がライバルなんて到底思えないけれど。
「アスモ様には聞いてたげたけれど、ウィルなんて茶髪緑眼の男は知らないって言われたわ。他の先輩にも聞いて見たけれど皆知らなかったわよ」
「そうか。やはりもう少し年上の方なのかな」
地味ダサ女はがっかりしたみたいだった。
でも、地味ダサ女がそのウィルの方が良いならば、王子様狙いの私からしたら嬉しい事だ。
もし万が一、万が一だ。あり得ない話だが、王子様がこの地味ダサ女を気に入っていたとしても、この地味ダサ女がウィル様に行けば、王子様は失恋してしまうのだ。
それを慰めればあっさりと王子様は私になびくかもしれない。
何しろ私はヒロインなんだから。
私は色々とつてを使ってそのウィル様なる人物を念のために調べてみようと思ったのだ。
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ここまで読んで頂いて有難うございます。
このサイドストリー
『転生したら地味ダサ令嬢でしたが王子様に助けられて恋してしまいました』
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