第20話 王子様と親しくする地味ダサ女に怒り狂いました

おのれ、地味ダサ女め。せっかく私が素敵な自己紹介文を書いてやったのに、それをケチ付けるなんて許さない。


翌朝、切れていた私は地味ダサ女を起こさなかったのだ。


何故、ヒロインで男爵令嬢様の私が毎朝毎朝地味ダサ女を起こさないといけないのだ。



「ニーナは?」

一人で食堂に降りてきた私を見て騎士志望のヨーナスが聞いてくれたが、


「たまには一人で起きてくればいいのよ」

私はそっぽを向いて答えたのだ。


「お前ら喧嘩したのか」

アハティが聞いてきたが、私は無視した。


「おい、ライラが怒っているぞ」

「まあ、ニーナだからな。何も考えずにライラの気にすることズバズバ言ったんじゃないのか?」

「まあ、ライラはお貴族様だからな。我慢も限界だったんじゃないか」

「まあ、ライラもニーナと一緒でわがままだからな」

「わがままどうしがぶつかったらこうなるのか?」

「まあ、圧倒的に被害に合うのはニーナだけどな」

「朝起こさないって、流石にニーナが可愛そうじゃない?」

ちょっとちょっとなんでニーナが可哀想になるのよ。

今まで付き合ってあげたから良いじゃない……


そのまま、地味ダサ女は起きてこなかった。


教室に着いても地味ダサ女は現れずに、ペトラが入ってきた。


そして、授業が始まったまさにその時に、最悪のタイミングで教室の扉をガラリと大きな音を立てて地味ダサ女は入ってきたのだ。


「いまだかつて私の授業を遅刻してきた不届き者はほとんどいないのです。それを2回も、なおかつ連続して遅刻してくるなど言語道断です……」


それを見て怒り狂ったペトラの叱責は続いたのだった……


私はいい気味だと思った。




授業が終わった後地味ダサ女は私を睨みつけていきたのだ。


ふんっ、私も睨み返してやった。


「えっ」

「お前らどうかしたの?」

周りの奴らが慌ててくれるが


「ふんっ、自分で起きられなかったからって、人のせいにしないでよね」

私は言ってやったのだ。今までどれだけ起こしてやったと思っているのだ。


「おいおい、おまえら喧嘩したのかよ」

アハティが聞いてきた。


「我儘ニーナの面倒見るの止めただけよ」

私は言い放ってやった。


ムカつくことに地味ダサ女は私に謝りもせずに、配るプリントまで投げてよこしたのだ。


平民風情が男爵令嬢様になんて事をしてくれるのだ。


そちらがそう言う考えならそれでいい。


「ライラ様。こちらでお話しましょう」

私達を見たイルマが声をかけてくれたので、私は男爵令嬢連中と話を楽しんだ。


ちらっと見たら地味ダサ女は一人きりだった。フンッ、私を怒らせるからよ。


そして、お昼も彼女らと一緒に食べたのだ。


食堂を見たらヨーナスらは彼らだけで食べていた。


私がいないと誰も地味ダサ女を誘わないみたいだ。


ふんっ、とても良い気味だ。



五限目の授業が終わって先生が去った後、地味ダサ女はいきなり立上ったのだ。


ガタンッ


勢い余った椅子が後ろに倒れて私の机に当たった。


「ちょっと、わざとやるの止めてくれる」

私は冷たい声で言ってやった。何してくれるのよ!


「あの……」

なんか地味ださ女が殊勝な声を出してきたが、こんな簡単に許すわけにはいかなかった。


「あなたはそれれでなくてもがさつなんだから、もう少し気をつけてよね」

そう言うと私は立ち上ったのだ。


「本当に平民ってがさつよね」

男爵仲間のイーダの言葉に乗っかるように言ってきた。


「まあ、この子がピカ一でがさつだけど。私は今まで我慢してたんだけど、流石にもう耐えきれないわ」

私は言い切ってやったのだ。


「第二王子殿下やユリアナ様にも平気で突っかかっていくし」

「一緒にいると私達までがさつさが移ってしまうわ」

男爵家のイーダとレーアが更に言ってくれた。


地味ダサ女は悲しそうな顔をしてそのまま教室を飛び出して行ったのだ。


男性連中が冷たい視線を私に向けてくるんだけど。


何よ。あいつが悪いのよ!





次の日はさすがに地味ダサ女は起きたみたいだ。


私は男爵家の連中と食事していたので地味ダサ女は無視したのだが。


一人寂しく地味ダサ女が座っている。


流石に少しは反省したのか?

私が少しだけ可哀想に思ったときだ。


「こちら、座ってもいいかしら?」

貴族崩れのノーラが地味ダサ女に声をかけていた。


二人は結構仲良く話している。

考えれば地味ダサ女は王子様にエスコートされた女として学内では有名だ。誰も側にいなかったら声をかける奴がいてもおかしくない。


私が耳をそばだてて聞いていると


「王都に『お菓子の家』っていうカフェがオープンしたのよ。そこのアップルパイが絶品なんだって」

「へえ、そうなんだ」

地味ダサ女はお菓子で釣られていた。


「明日は土曜日で学園は休みじゃない。実は友達と行くんだけど、良かったらあなたも一緒に行かないかなって」

「えっ、本当に? でも、私が一緒に行っても良いの?」

「大丈夫よ。二人とも気さくな方だから」

「そうね」

確か、ノーラはいろんな貴族の嫡男に声かけていたような気がした。

その出汁に地味ダサ女を使うつもりかもしれない。


馬鹿な地味ダサ女は約束していたみたいだけど。


まあ、喧嘩してるところだし、そこまで親切に教えてやる必要もあるまい。


それに地味ダサ女が誰かと付き合うようになれば邪魔な女が減るし。

私はそれを無視することにしたのだ。



そして、食後、私は王子様を探しに、今度は図書館に行ってみたのだ。


端から端まで探していると、二階の目立たない隅で王子様を見つけたのだ。


やっぱり日頃の行いが良いからだ。私は神様に感謝したくなった。


どうやって声をかけようかと悩んでいたら、中から他の声がするのだ。


中に女もいるらしい。


私が覗き込むと何とそこには帝国語の教科書を開いた地味ダサ女がいたのだ。




ガーーーーーン!


なによ、これは!


それもふたりとも仲良さそうに話している……


ちょっと待って、その位置はヒロインの私の位置なのに!


なんで地味ダサ女がそこにいるのよ!


もうこの女は絶対に許さない。


私は心に決めたのだ。

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怒り狂ったライラの取る行動は?


今夜もう一話更新予定です。


このサイドストーリーは『転生したら地味ダサ令嬢でしたが王子様に助けられて恋してしまいました。』https://kakuyomu.jp/works/16817330667785316908

そちらもよろしくお願いします。

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