第21話 地味ダサ女を助けたらいつの間にか侯爵令息の書記役をさせられていました。

殿下と仲良くする地味ダサ女に完全に切れた私だった。


ただ、ノーラの周りに聞き込みすると、ノーラが連れて行こうとしているのは、女に手が早いと有名なユリアンティラ子爵令息とその取り巻きのおこぼれ頂戴型のウィモネン男爵令息だった。


おいおい、ノーラもなんて奴らを連れて行くんだ。


できちゃった婚で玉の輿狙っているのか?


いくらノーラの家が貴族崩れとはいえ、できちゃった婚は人聞きも悪いだろう。


女としては孕ませられるのは外聞が悪いから、泣き寝入りしている者もいるみたいだ。


それに、ユリアンティラは手が早くても有名だから修羅場に慣れてそうだし、金で解決して降ろさせるのではないのか?


まあ、ノーラがそうなっても問題はないし、地味ダサ女がそうなってももいい気味だと思うのだ。


本当に良い気味だ……


本当に……


地味ダサ女は馬鹿だからな……


馬鹿笑いする地味ダサ女と泣きそうな地味ダサ女が交互に脳裏に浮かぶんだけど……


どうした私?


『お菓子の家』っていうカフェだそうだから、取り敢えず、私は行ってみることにしたのだ。


あとはそこで考えたら良いだろう!



強引にイルマとイーダとレーアを誘って、ハナミ商会の力で予約したのだった。


10時すぎに入ったのだが、地味ダサ女たちはまだ、見当たらなかった。


私は久しぶりに地味ダサ女たち平民連中じゃなくて、貴族の令嬢方と話した。

そして、ドレスの話で大いに盛り上がったのだ。


いま隣国では絹の衣装が流行っているらしい。


私は前世の知識で、東洋で蚕から絹が取れる話を延々としてみたのだ。


熱心に他の三人は聞いてくれた。



そう言えば地味ダサ女はまだなのだろうか?

いい加減に時間が立ったので、トイレに行くふりをして店内をみたら、何とノーラと金魚のフンのウィモネンはいるのだ。


ユリアンティラ男爵令息と地味ダサ女が居ないんだけど……


来なかったんだろうか?




私は入り口にいるボーイにチップを渡して

「私の友達のニーナっていう地味な女の子は来ていないの。黒髪の」

って聞いてみたのだ。

「さあ、どうでしょうか」

こいつはなかなか話してくれなさそうだった。


「ユリアンティラ子爵令息と来ていると思うんだけど」

二枚の金貨を渡すと

「そう言えば二階の個室にご案内したかと」

かまをかけたら、あっさりと教えてくれた。


「あの馬鹿」

手の早い貴族の男と個室に入るってどういう事だ。


まあ、私の王子様に手を出したあいつが悪い。


孕まされて、捨てられたら良いんだと思おうとした時に


「おい、居ないじゃないか」

不機嫌な声を出した殿下が中から出てくるのに出会ってしまった。

茶髪に染めていて目も緑になっているが、雰囲気はそっくりだ。

何故ここに殿下がいるんだ?


「えっ」

私がもろに殿下を見てしまったので、殿下は誤魔化して逃げようとするんだけど。


「殿下。ニーナは二階の個室にユリアンティラ子爵令息といるんじゃないですか」

私は思わず言ってしまった。殿下の探しているだろう人物の名を出してみると


「何だと。あの手の早いユリアンティラとか」

いきなり怒り出した殿下は二階に駆け上がっていくんだけど。

ええええ! 殿下って休みの日の地味ダサ女の行動を気にしてここまで来たのか?

私は信じられなかった。いやいやたまたまだ!


そう思おうとしたときだ。


「ライラ嬢、なんで君はここにいるんだ。ニーナ嬢とは喧嘩していたんじゃないのか」

その後ろにいきなりこれも変装したアクセリが出てきたのだ。

それに喧嘩したのもバレているし。どこの誰だよ。この男にバラしたのは?


「たまたま、同じ店に来たらニーナが子爵令息と個室にいるって聞いたんです」


ダンッ

二階で大きな音がした。


「大丈夫か、ニーナ嬢!」

殿下の声が響く。


「ちょっと我々も行こう」

私はアクセリについて二階に上がる。



「ウィル様!」

そこでは弾き飛ばされて地面に倒れている子爵令息と、殿下に抱きついている地味ダサ女が居たんだけど、地味ダサ女が殿下のことをウィル様って呼んでいるんだけど。


「えっ! ウィル様って殿下だったんだ」

思わず私は呟いていた。それもアクセリの真横で。


「あなたは……」

なんか、子爵令息は驚いて殿下を見ていた。


「お前は、王立学園の生徒になんて事してくれるんだ」

「いや、これは私とニーナ嬢の問題で」

「嘘言わないで、いきなり胸に手を伸ばしてきたのはあなたじゃない!」

私が子爵令息の意見にムッとして反論すると、

「そもそも個室になって文句を言わなかったのはお前だろう」

「個室しか無いって言ったのはあなたじゃない!」

「個室に二人になった段階でこうなっても良いって事だろうが」

「なんですって!」

痴話喧嘩みたいになっているんだけど、呆れたアクセリが横から出てきた。


「ユリアンティラ子爵令息。確かに、ニーナ嬢は貴族のマナーを知らないかもしれませんが、それを、あなたが悪用して良いと言う事はないですよね」


「あ、あなた様はトウロネン様……」

子爵令息が驚愕して、アクセリ様を見ているんだけど。


そらあ、怖いよね。


それでなくとも、普通の時でさえ、アクセリに話しかけるのはためらわれるのに、不機嫌なアクセリなんて、絶対に話したくない。


「ユリアンティラ子爵令息、詳しいことは隣で聞きましょう」

そう言いながらアクセリがユリアンティラをこちらに連れてくるんだけど。


「ライラ嬢。君は悪いけれど、これから調書を取るから手伝ってくれ」

いきなりアクセリに言われたんだけど。


「いえ、私も友達と来ていて」

「友達って誰だ?」

聞かれて素直に答えると、

「彼が伝言してくれるよ」

アクセリ様は不敵な笑みを私に向けてくるんだけど。


ええええ! それは絶対なの。


「ところでユリアンティラ君。君の行動は学園でも大きく問題になっているのだよ。それも今回は殿下がエスコートした子に手を出そうとしたよな。これは子爵も知っているのか」

「いえ、それは」

もうユリアンティラはタジタジなんだけど。


でも、ちょっと待って私はどうなるのよ?


いつの間にか私は紙とペンを持たされて書記の役をさせられているんだけど。


どうしてこうなったのよ!

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本日2話目です。アクセリに執着されだしたライラでした

もう一話今夜更新予定です

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