第10話 会場の注目を地味ダサ女に奪われました
私は真っ赤な地味ダサ令嬢とは違い、王都でも人気の店にオーダーした最新の流行を織り交ぜた緑のシックな色合いの衣装を着てロビーに降り立ったのだ。
皆が私を見ている。そうそう、よく見るのよ!
「えっ、何か馬子にも衣装だな」
地味ダサ女を見つけたアハティがお世辞を言ったし
「えっ、お前本当にニーナ?」
ヨーナスも驚いていた。
隣の地味ダサ令嬢は今日は真っ赤だからとても目立っていたが、ちょっと待った!
真っ赤なけばけばしい衣装の横にいると、流石の私の洗礼された衣装も目立たなくなるわ。
「あ、ライラ嬢。お待たせしました」
アスモがやってきた。
「じゃあ、ニーナ、頑張ってね」
私はここにいては目立たなくなってしまうと、これ幸いとさっさとアスモと会場に行くことにしたのだ。
あの真っ赤がいなくなると流石に皆私を見てくれる。
「すごいねライラ嬢、それ王都の人気のオートクチュール、パダスのだよね」
さすが伯爵令息アスモ、店の名前も知っているみたいだった。
「そうなんですの。作ってもらうのに1年もかかりましたわ」
「ハナミ商会の会長の娘でもそうなんだ」
「なんでもオーナーが義理堅いので順番を守るそうですわ」
「ねえねえ、あの子、あれパダスの新作じゃない」
「なんで新入生が新作なんて着られているの」
「王妃様が頼んでも1年待ちって言われたのに」
「何言っているのよ。あの子、ハナミ商会のお嬢様よ」
「本当だ。お金のある家って良いわよね」
外野からの私を称賛する声が響いてきた。
そうそう、もっと美人とか女神みたいって言っていいから。
私が鼻高々としていると
アスモが少し白い目で見ていた。いけないいけない。
私は慌ててしおらしく構え直した。
「今日は私のためにお時間作って頂いて有難うございます。でも、宜しかったんですの。アスモ様程の方でしたら、エスコートして差し上げたい方が他にいらっしゃったのではないのですか」
私が心配して聞いてあげた。一応彼に婚約者がいないのは調査積みだ。
そして、ゲームでは彼が心寄せている少女は病で療養しているはずだった。
彼のルートはその子が亡くなって自暴自棄になっている彼を主人公が慰めて仲良くなるのだ。
今も結構病は進行しているはずだった。
だからか彼の見せる表情は時折暗いものが感じられる。
悲しみをたたえる美形も横から見ている段には見ごたえがあった。
「どうしかした? 私に何か付いていますか」
あまりにも私が見すぎたからか彼か聞いてきた。
行けない行けない。私は首を振って
「なにか憂いを耐えていらっしゃるようにお見受けしましたの」
「いや、何でも無いよ。そんな顔していたのかな」
不審そうに彼が聞いてきた。
しまった! まだ、病気の彼女のことは内密のはずだ。
私は失敗したのを知った。
ちょうどそんな時だ。
会場の入り口が急にうるさくなってきた。
なんだろう?
「えっ!」
「きゃっ!」
「殿下が女をエスコートしておられるわ!」
「嘘!」
「誰、あの女?」
「平民クラスの不敬女よ」
「不敬女?」
「ほらあのゴールでユリアナ様に喧嘩売った」
「ああ、あの」
そこには真っ赤な地味ダサ女とビシッと真っ白な生地に金糸が入った衣装で決めた第一王子殿下が入場してきたのだ。
クッソーーーーあの女。本来私がその位置だったのに!
私は思わず、隣にアスモ様がいるにも関わらず、ハンカチを噛みそうだった。
「凄いな。ヴィル、本当にあの子をエスコートしてきたんだ」
横でアスモ様が感心しておられた。
「でも、あの子も凄いよね。今まで誰に頼まれても絶対にエスコートしなかったヴィルがエスコートしているんだから」
「それだけ図々しいのですわ」
私がアスモ様に言うと
「いやいや、図々しさでそこまで出来たら凄いよ」
「さすが会長。自ら進んで学園には身分差はないということを身を持って示していただいているんですね」
嫌味で氷の貴公子のアクセリが王子様に言っているんだけど。
「嫌味は良いよ、アクセリ。ニーナ嬢に強引に借り物競争の時に引っぱり出されたんだ」
両肩をすくめて王子様が言う。
そうそう、殿下も仕方なしになのだ。
「なるほど。会長は強引さに弱いと」
「止めてくれ! 今でも、令嬢たちの強引さに辟易しているのに、これ以上されたらたまったものじやないよ」
「でも、今日は一曲ニーナ嬢と踊った後はそうなるぞ」
そうなのだ。その時が勝負だ。
私はアスモ様と一曲踊った後絶対に殿下と踊るのだ。
殿下が挨拶に立った。
私は地味ダサ女に必死に信号を送ったんだけど、あいつはぽかんと殿下を見ている。
しまった! 前もって地味ダサ女に良く良い含めておくんだった。
私はとても後悔したのだ。
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この話のサイドストーリー
『転生したら地味ダサ令嬢でしたが王子様に助けられて恋してしまいました。』
絶好調更新中です!
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