第16話 地味ダサ女が私の王子様にキスされたと聞いて私の心の中は暴風が吹き荒れました
私は学園に帰って来た時はもうお昼も終わりの頃だった。前の席を見ると、まだ、地味ダサ女は帰って来ていなかった。
何してるんだろう? 次は礼儀作法の授業なのに!
さすがの私も少し、気になった。
地味ダサ女はチャイムがなった後にガラリと、扉を開けて入ってきたのだ。何をしてくれるのだ?
遅刻するなら、休めば良いのに!
これは集中攻撃だ。まあ、地味ダサ女一人が被害に会うなら良いけれど、それだけで済む訳はない。
馬鹿な男爵令嬢が地味ダサ女を笑って、先生に吊し上げられていた。本当にこいつらは馬鹿だ。
「本当にニーナは何やっているのよ。ペトラ先生は厳しいって言ったじゃない」
次の授業ために私は大教室に移動しながら地味ダサ女に怒っていた。
「ペトラ先生はこの学校で教鞭を取られて40年なのよ。基本的に今の国王陛下も王妃様もペトラ先生に習っているの。だから、陛下と言えどもペトラ先生には逆らえないのよ。基本的に王宮の侍女も文官もペトラ先生の教え子だし、あの煩いサデニミエ公爵令嬢も、先生にだけは逆らえないはずよ。何しろペトラ先生は王宮の礼儀作法の先生でもあるんだから。
そんな先生の最初の授業に遅れて来るってどういうことなの?」
「ゴメン、ちょっと考え事していたら、遅れてしまって」
「考え事ってあなたが何を考えるのよ」
こいつが考え事するなんてちゃんちちゃらおかしい。絶対に居眠りかなにかしていたはずだ。
「失礼な。私も考えることはあるわよ」
「入学式で大口を開けていた人がよく言うわ。どのみち、殿下からどうしたらまたお菓子がもらえるかとかそんな事でしょう」
私はその時まではこいつと王子様になにかあったなんて全く思ってもいなかったのだ。
「そんなことじゃないわ」
「じゃあ、今度はお昼をどうにかして奢ってもらう方法とか」
これ以上、この地味ダサ女に王子様に近づいてもらったら困る。私は脅して釘を刺そうと思ったのだ。
「そんなんじゃないわよ」
「ニーナ嬢」
「殿下!」
私はそこにいきなり、私の王子様が現れて驚いた。それもヒロインの私を無視して、地味ダサ女に声かけたんだけど、なんで?
その上、地味ダサ女が真っ赤になって慌てて、私の後ろに隠れたのだ。
「ど、どうしたのよ。ニーナ。今までは殿下の前でもびくともしなかったのに」
私は唖然とした。
この二人になにかあったのか?
「ライラ嬢。少しニーナ嬢をお借りできないだろうか。話すことがあって」
「いえ、会長。私はないです。別に気にしないで下さい」
「いや、そう言うわけには、先程は本当に申し訳なかった」
何と私の王子様が平民の地味ダサ女に頭を下げたのだ。
王族が頭を下げている……
私はあまりのことに一瞬固まってしまった。
「止めて下さい。会長。こんなところで。本当に何ともありませんから。ではさようなら」
私は地味ダサ女に引っ張っていかれるんだけど。
「いや、ちょっとニーナ嬢」
王子様は必死に声をかけて来るんだけど。
「殿下、このような処でどうされたのですか?」
後ろからユリアナらが現れたのだ。
「えっ、いや、たまたま通りかかっただけで」
後ろで殿下が言い訳しているが、私の心の中は嵐が吹き荒れていたんだけど。
ひょっとして私がいない間に、二人に更に進展があったのか……
そんな馬鹿な。たった2時間私が学園からいなくなっただけで……
「ちょっと、どういう事なのよ?」
渡り廊下の角を曲がった大教室の手前で強引に私は地味ダサ女を横の木の茂みに連れ込んだ。
「えっ、いやあのその……」
「あなた、王族に頭を下げさせたってどういう事? ふつう王族は頭なんか下げないわよ。一体今度は何をしたのよ」
「ちょっと待ってよ。なんで私が何かしたになるの? 普通は何をされたのよって聞くところでしょ」
「いやだって、昨日も嫌がる殿下をいきなり借り物競争に連れ出したじゃない」
私は取り敢えず、言ってみた。
「あれは知らなかっただけで、私が何かしたのなら謝るのは私でしょ」
「いや、あなたの場合は逆かなって」
心の動揺を隠すために取り敢えず、言ってみた。
「そんな訳ないじゃない」
「でも、あれ殿下は相当焦っていたわね。あの反応はひょっとして殿下にキスでもされたの?」
私は取り敢えず、カマかけてみたのだ。絶対に起こり得ないと思われることを。
「えっ、なんで判ったの」
「嘘! 本当なの! カマかけただけなのに!」
私はその言葉にハンマーで殴られたようなショックを受けたのだ。
「ちょっとライラ声が大きい」
地味ダサ女が言うが、私の心はそれどころではなかった。
「待ちなさいよ。ニーナ! 相手は王族でこの国の第一王子殿下よ。それも女に塩対応するっていう。貴方は平民の変な奴で安全パイ扱いだから王子も相手してくれたかなって思ったのに、いきなりキスされたってどういう事? 信じられない」
「いや、だから違うって。殿下はマイラと言う人と間違えて頬にキスしてくれたのよ」
「ちょっとどういう事よ」
私は更に聞きたそうにした時に次の授業のチャイムが鳴ったのだ。
「げっ、やばい」
地味ダサ女が慌てて飛び出したんだけど。
「ちょっとニーナ、詳しく話してよ」
「後でね。次も遅れるわけにいかないでしょ」
「判った。後でちゃんと教えなさいよ」
私は怒りを押し殺して地味ダサ女に言っていた。
地味ダサ女に殴りかからなかったのは、かろうじて残っている心の良識が止めてくれたのだ。
そうでなかったら絶対に地味ダサ女に殴りかかっていた。張り倒してそのまま意識をなくすまで殴り続けたはずだ。
こいつ、私の王子様にキスされるなんて絶対に許さない!
一体全体どのようにしてやろうか!
私の心は暴風が吹き荒れていたのだ。
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ここまで読んで頂いて有難うございます。
ニーナの運命やいかに
続きは明日です
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