第17話 魔法適性検査の結果を覆して地味ダサ女は大きな水魔法を放ちました

遅れそうになって入って来た私達は

「おい、こっちだ」

アハティが呼んでくれたのでその傍に座ったのだ。


私は地味ダサ女が私の王子様にキスされたことを知ってとても動揺していた。

地味ダサ女が何か皆から言われていたが、動揺していた私は適当に誤魔化していた。


今回は魔法適性検査だ。

そう、このゲームのいわば中核になるところなのだ。

私は誰が何と言おうとこのゲームのヒロイン、ライラ・ハナミなのだ。

ぼうっとしていてはいけない。


このゲームのヒロインはこのゲームの名の『カルドアヴィの聖女』の通り聖女なのだ。

そして、聖女になるには火、水、風、土の4属性を均等に出来るようにならなければならない。

その上、四属性持ちでも必ず聖女に成れるかと言うとそんなことはないのだ。

愛する人が傷ついて生死を彷徨うことになった時に初めて聖女の力が宿るのだ。


そして、ヒロインの私は今既に4属性持ちなのだ。本来ならばヒロインは学園にて色々努力して4属性もちになるのだが、前世の記憶を取り戻した時から魔法の家庭教師を親に頼んでつけてもらって必死に訓練してきたのだ。

その結果既に私は4属性持ちになっていたのだ。


そう、後はダンジョン探検によって私の王子様が大怪我を負った時に必死に治そうとして私に聖女の力が宿るはずだった。


そして、その時が来るまでは4属性持ちのことはこのことは秘密にしようと思ったのだ。


ゲームでは4属性持ちであるとバレて、第一王子、第二王子、それにアスモ、果ては一番お近づきになりたくない、アクセリまでもが私に執着し出すのだ。私の王子様とアスモはまだいいとして、アクセリだけは絶対に嫌だった。


アクセリに注目されないように、ここでの結果は水魔法だけになるように、水魔法の先生に頼んでいたのだ。水魔法の先生は、前もって面談しており、先生にはとても気にいってもらえているのだ。

先生としては他の先生に取られたくないとのことで私に協力してくれることになっていたのだ。莫大な研究費という名の賄賂を父から払っているのは言うまでもない。

何事も準備が大切なのだ。


このまま適性検査は水魔法だけになるはずだった。


悪役令嬢のユリアナは風。第二王子は濃い赤色、火だった。ユリアナの取り巻きは水と土が多かった。


そして、我がクラスの先頭バッターはヨーナスだ。


彼は紙を液に付けると真っ青な青になった。


「凄い!」

「ここまで青いのは初めてじゃないか」

C組から歓声が上がる。

「お前は風だな」

ヴィルタネン先生はあっさりと言った。


そして、次は地味ダサ女だった。こんな平民大したことはないだろう。


私の思った通り出てきた紙は薄っすらと一部だけ青だった。


風、それもとても弱い風だ。


これで平民でもある地味ダサ女は殿下と結ばれることはないだろう。私はホッとした。


元々、平民なんて王子様とは釣り合わないが、唯一の例外は聖女になることだった。


こんな微々たる青では絶対に聖女にはなれないだろう。私は安心したのだ。


「何だこのちゃちな青は。あるかないかだな」

ヴィルタネン先生は馬鹿にしたように言ってくれた。

A組の連中がドッと笑ってくれる。


「さすがお情けで学園に入学してもらった平民の魔力は違うな。こんなのは貴族なら生まれた赤ちゃん以下だぞ」

そうだ。そうだ。もっと言え、私は少し浮かれていた。


「先生、言葉が過ぎますよ」

すかさず、我がクラスの平民の先生が水をさしてくれたが、


「文学士の平民の先生は黙っていてもらおうか。魔法は私の専門だ」

ヴィルタネン先生は取り合わなかった。

そうそう、いい気味だ。


「何か、第一王子殿下にエスコートして頂いていい気になっているようだが、こんなちゃちな風魔法しか使えないのならば先が思いやられるな。殿下もお情けでエスコートされたんだと思うが、もう少しましな奴をエスコートされないと、殿下の目は節穴かと皆に言われてしまいますな」

ヴィルタネン先生は私の気持ちを代弁してくれた。

こんないい先生ならば私は風にすればよかったと後悔したくらいだった。


「先生。私は一応水魔法が使えるはずなんですけど」

そこに地味ダサ女はとんでもない事を言い出したくれた。


何をふざけたことを言ってくれる!

魔法適性検査が嘘を出す訳はないのだ。それは私みたいにいろいろと細工しないと無理なのだ。


「何を言っているのだ。貴様が水魔法なんて使えるわけはないだろう。この適性検査によると風魔法ですらまともに使えるかどうかわからない赤ちゃんレベルなんだぞ。ニーナ・イナリ。貴様、殿下らに良い所を見せようとして虚言グセまでついたのか?」

ヴィルタネンは白い目で見てくれた。


「そんな訳ありません。私は水魔法が使えるはずです」

「何を言っているのだ。この魔法適性検査の正確さは99.99%なのだ。ほとんど100%と言えるのだ。その結果がヘボい風魔法しか使えないと示しているのだ。貴様が水魔術使えるのならば、すべての赤子が全魔法適正で生まれてくるわ」

ヴィルタネン先生は大きな口を開けて笑ってくれたのだ。

そうそう、もっと笑ってほしい。私も思わず一緒に笑いそうになって慌てて口をつぐんだ。


「本当に!」

「生意気な平民の女は嫌ですわ!」

ユリアナらの馬鹿にしきった声が響いた。


「じゃあ、やってみてもいいですよね?」

地味ダサ女がなんか言っているんだけど。


「ニーナさん。無茶はやめて」

流石の担任求めようとしてくれた。この地味ダサ女は何をしたいんだろう?

私の王子様に良い所を見せたいのか?

でも、魔法適性検査の結果は全てなのだ。

この地味ダサ女が水魔法を使えるわけはないのだ。


「やれるものならやってみろ。私に向かって水魔術を使ってみるが良い」

ヴィルタネンは完全に地味ダサ女を馬鹿にしていた。


「判りました」

私も地味ダサ女を完全に馬鹿にした。出来るわけ無いのに構えるなんて、これでさらに地味ダサ女は株を下げるだろう。


「何だそのヘッピリ腰は。そんな構えで出来るわけはなか……」

「行っけーーーーー!」

しかし、しかしだ。


その時巨大な水の塊がヴィルタネンを直撃したのだ。


その水の大きさは私より大きかった。

その大量の水はヴィルタネンを飲み込んでその下で笑っていたA組の面々に向かっていったのだ。



な、何故だ? 何故こいつは私よりも大きな水魔法を出せたのだ?

それも何故魔法適性検査が間違っていたのだ?


私は驚きのあまり大口を開けて地味ダサ女を凝視していた。

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