第25話 地味ダサ女に裏切られた私は陰で地味ダサ女を虐めさせました
私の王子様が地味ダサ女をニーナ呼びして、鼻血を出したその地味ダサ女を大切そうにお姫様抱っこで保健室に連れて行ったのだ。
私は許せなかった。
地味ダサ女は殿下は私に譲ると言ってくれたのに!
陰で仲良くなるなんて許せない。
元々王子様と地味ダサ女が気持ちを寄せるウィル様が同じ人物だなんて言い訳は無しだ。
だって地味ダサ女がそれを知らないのだ。
王子様は私に譲ってくれると約束してくれたのに、私との約束を反故にして親しくなるなんて許せなかった。
その上、生徒会委員の私はやりたくないのにアクセリの補佐役につかされて、毎日遅くまで働かされているんだけど……何故だ?
それにプラスして会長の王子様は全然やってこないんだけど。
たまに来てもアクセリと二、三話して即座に出ていくし、私が生徒会委員になった意味ないじゃない!
冷酷非道のアクセリには完全に雑用係として認識されて、どんどん仕事を振られているんだけど、絶対におかしい。
そして、更には私は、いつもいない王子様が、地味ダサ女と楽しそうに生徒会室の裏で魔法の練習をしているのを見つけてしまったのだ。
おのれ、地味ダサ女め。人が一生懸命やりたくもないアクセリの仕事をしている時に、影に隠れて私の王子様と仲良くしているなんて絶対に許せなかった。
私はこれ以上地味ダサ女と王子様が近付くのは得策でないので、前回みたいな地味ダサ女との完全な喧嘩はしなかった。
しかし、きつく当たることにしたのだ。
判らないところ聞いても「まず、自分で調べなさいよ」とにべもなく断るようにしたのだ。
「毎日、放課後、ニーナはいなくなるけれど、どこに行っているんだ?」
アハティが放課後聞いてきたので、
「さあ、この前生徒会室の裏で殿下と何かしていたわよ」
私は皆に聞こえるように、大きな声で言ってやったのだ。
「えっ、ライラさん、それ本当?」
イルマが目ざとく聞いてきたのだ。
こいつは下手したらA組のユリアナと繋がっているのだ。
「何しているか知らないけれど、良く生徒会室の裏に殿下といるのは見るわよ」
私は更にイルマを煽ってやった。
これて噂は広がるだろう。
それと同時に、噂話に飢えている我が商会の客の中でもおしゃべりな夫人達に、殿下が王立学園で親しくしている女がいるようだと伝わるようにしたのだ。
それにプラスして地味ダサ女と王子様はちょくちょく目撃されていたからあっという間に貴族を中心に噂は広まったのだ。
ふふふふ! 地味ダサ女め。嫉妬に狂った女たちの洗礼を受けて苦しむがいいわ。
私は心のなかでほくそ笑んだのだ。
「あれっ」
昼休みが終わって教室に帰って来た地味ダサ女は慌てて机の中をゴソゴソしだした。
「どうしたの?」
私は心配したふりをして何がないのか聞いてやった。
早速いじめが始まったみたいだ。
「いや、帝国語のレポートが無いのよ」
地味ダサ女は慌てて言った。
「おい、ニーナ、あの池の上に何か紙が浮いているけれど」
目敏いヨーナスが見つけて教えてくれたんだけど……
教室の傍にある池の上に地味ダサ女のレポート用紙が浮いていた……
横でイルマらがニヤリと笑ったのを私は見逃さなかった。
ナイスだ。イルマ、良くやった!
私は褒めてやりたかった。
「ギャッ」
文字通り地味ダサ女は奇声を上げて教室の窓から飛び出してくれたんだけど。
「ちょっと、ニーナ」
私は近くに居たら先生たちに聞こえるように大声で叫んでやったのだ。
ニーナは我関せずで、レポート用紙に手を伸ばす。
「もう少し」
地味ダサ女は必至に手を伸ばした。
その時だ。私は影に隠れて後ろにいたユリアナが風魔法の詠唱するのが遠くからちらりと見えた。
さすがユリアナ良くやった、と私は叫びたかった。
ドボン!
後ろから強風が吹いて地味ダサ女を池の中に落としたのだった。
地味ダサ女がびしょ濡れになった様子に一部でどっと笑いが起こった。
私も笑ってやったのだ。友達たちには見えないように心のなかで盛大に!
「ニーナさん! そこで何をやっているのですか?」
そして、そこには待ちに待った怒りに狂ったペトラが仁王立ちしていたのだ……
ナイスタイミングだ。
池の汚い水で、地味ダサ女がドボドボになるわ、ペトラが憎き地味ダサ女を怒ってくれるわ、地味ダサ女のレポートが水にぬれてダメになって帝国語の先生が怒ってくれるわ……
ペトラは礼儀作法の授業でもないのに反省レポート10枚の刑を言い渡してくれたのだ。
そして、それからイジメは収まるどころか私の思惑とおりにどんどんエスカレートしていったのだ。
教科書や、ノートが無くなったり、廊下を歩いていると地味ダサ女の頭の上に水が上から落ちてきたり……
「うふふふふ、馬鹿みたい!」
廊下を歩いている時に水が降ってきた時は横でイルマが大笑いしてくれたけれど。
「温風よ、出でよ!」
よく水を落とされる地味ダサ女はいつの間に覚えたのか温風魔術で乾かしてくれたのだ。
そして、イルマの頭の上から水魔法を落としてくれた。
「ぎゃーー」
イルマは叫んでいた。イルマも馬鹿だ。もっと判らないようにやらないと。私みたいにさり気なく、地味ダサ女のカバンから筆入れを取り出して池に捨てるとかしないと……
「ちょっとニーナ、待ちなさいよ」
後ろからずぶ濡れのイルマが叫んでいた。
「何かしら」
地味ダサ女は平民のくせに態度も大きくなっていた。
「あなた、今、私に水をかけたでしょう」
「まさか。イルマさんもご存知でしょう。私は魔法適正検査では皆さんにバカにされた様に、ほんの少しの風魔法しか使えないのですよ。水魔法なんて使えるわけ無いではありませんか」
「そんな訳無いでしょ。あなた適性検査の時にヴィルタネン先生らに水魔法をぶっかけてたじゃない」
「あれはたまたまですよ。そうか、私がやったという証拠でもお有りなのですか?」
地味ダサ女は何か言っているけれど、どう見てもやったのは見え見えだろう。
「これはこれは、平民風情が貴族の令嬢に水魔法をぶっかけてしらを切るとは、この学園の秩序はどこまで乱れているのかしら」
そこには憎々しげに地味ダサ女を見下すユリアナ・サデニエミ公爵令嬢が立っていたのだ。
やった、やっと出てきたラスボスの悪役令嬢。
やれ! やれ! 今こそ地味ダサ女を完膚なきまでに叩きのめしてくれ。
私は期待に満ちた目で悪役令嬢を見たのだった。
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ここまで読んで頂いてありがとうございます。
今日はサイドストーリーの
『転生したら地味ダサ令嬢でしたが王子様に助けられて恋してしまいました』
https://kakuyomu.jp/works/16817330667785316908
お楽しみに!
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