第7話第二王子殿下との競争で、負けてほしかったのに勝ってしまいました

次はじゃんけんゲームだったのだけど、地味ダサ女は圧勝だった。


馬鹿ほどじゃんけんは強いというのを証明してくれた……


そして、二人で漕ぐ四輪車の競技だ。残りの三人は前と後ろに乗れるように椅子がついていた。

「じゃあ、ヨーナスとアハティよろしく」

地味ダサ女は指示すると一人でご満悦だった。


ちょっと待ってよ。この中で最高位は男爵令嬢の私なんだけど……何故あなたが指示するのよ!

私は余程言いたかった。


「俺たちが漕ぐのかよ!」

「仕方ないでしょ。あんた達が一番体力があるんだから」

地味ダサ女の言葉に二人は仕方無しに漕ぎ出す。


「そら頑張って」

「何かめちゃくちゃ重いぞ」

アハティが失礼なことを言ってくれる。


「あんたらの体重がでしょ」

「そうよ。どう見ても私もニーナもハッリも軽いわよ」

地味ダサ女の言葉に珍しく私も同意した。



「見てみて、皆! 前に殿下らが見えてきたわよ」

地味ダサ女が皆に叫んだ。


ああああ! 

私の二番目にお気に入りの第二王子殿下だ。


本来は私はAクラスで第二王子殿下と一緒の班だったはずなのに!


そして、このイベントで第二王子様と仲良くなったはずなのだ。必死に漕ぐ殿下を私が応援して、二人で良い仲になるはずだったのに!


なぜ私が最低のCクラスになんかになったんだろう?


私はズドーーーーンと落ち込んだ。

一緒にいるのは私の王子様になぜかエスコートされることになった地味ダサ女とその他大勢の平民たちだ。見た目もパットしないし、こいつら全員、商会の儲けになりそうな金持ちもいない。


考えたら、ここで殿下に勝って下手に顰蹙を買うとわが商会の売上が減るかもしれない。


ここは適当にやろう。


私がどうしたものかと、考えていると、平民のアハティがやはり将来的に不味いと感じたみたいで、力を抜いているのが判った。


そう、そう、それで良いのだ。長いものには巻かれないと。



「あと、少しよ。頑張って!」

でも、そんな事は全く考えていない地味ダサ女が必死に応援している。


いやいや、ここは王子に恩を売るしか無いだろう。


追いついた途端、わたしたちのグループの四輪車は急にスピードを落としたのだ。


「ちょっと、二人共忖度したら駄目よ」

「何だ、忖度って」

「相手が王子殿下だって思ってまわざと負けることよ」

地味ダサ女が言うんだけど、将来的な事を考えたら、平民だろうが貴族だろうが、王子様に花持たせようとするのは当然のことだ。


考えていないのは地味ダサ令嬢だけだろう。

その考えの無さが、第一王子殿下の諦めに繋がったのかもしれないが。



「不敬女。何を言う。これは正々堂々と勝負しているのだから、負け惜しみを言うな」

殿下が言うけれど、そうそう、ここは殿下にそう思わせて負けるのよ!

私はアハティに心の声を送ったのだ。


「アハティ!」

「いや、俺は別に」

「あんた、殿下を勝たせたからって未来の近衛騎士の仕事は回って来ないわよ」

「そうよ。ニーナと一緒の班なんだからもう目をつけられているって」

私はそう言って更にアハティを落ち込ませた。


「えっ? やはりそうなのか」

なんか、ますます、アハティのやる気がなくなっているんだけど……

そうそう、それで良いのだ。


これで殿下が勝てば、少なくとも恨まれることはない。


ゴールが見えて来た。


「ああん、もう良いわ。アハティ、私に代わって」

「代われって、ニーナには無理だろう」

「任してよ。私は田舎育ちなんだから」

そう言うと地味ダサ女が強引にアハテイに代わったのだ。


な、何をするのよ。でも、あなたがアハティほどの体力あるわけはないし、これはこれでありか?


「後少しよ。ヨーナス、行くわよ」

「えっ、本当に? あれ、早くなった?」

私達の二輪車はゆっくりと加速していったのだ。


あっという間に殿下に並ぶ。そして、抜き去ったのだ。


ええええ! 地味ダサ女。あなたそんなに力があったの?

これはまずいのでは。


「ニーナ、大丈夫? 苦しかったら私が代わろうか」

「まだまだ大丈夫よ」

私の地味ダサ女に代わって殿下に負ける作戦は一顧だにされずに拒否された。


地味ダサ令嬢は更に加速していくんだけど。


ちょっと殿下、女に負けないでよ!


私は心の中で叫んだが、我がチームは更に加速して殿下に圧勝してしまったのだ。


何故、勝ってしまうのよ!

私の心の叫びは誰にも届かなかった。

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『転生したら地味ダサ令嬢でしたが王子様に助けられて恋してしまいました』

https://kakuyomu.jp/works/16817330667785316908


のサイドストーリーです。こちらの話は地味ダサ女が主人公です

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