第30話 何故か氷の貴公子が優しかったので可怪しいと思ったら、帰ったら書類の山に囲まれてしまいました。
私は自分の家の馬車で帰る気だったのだが、何故か家の馬車の都合がつかないとかで、そのままアクセリの馬車に乗せられたのだ。
なんで乗ってしまったんだろう。
やっぱり私の頭の回転が失恋のショックの余り少しおかしかったのだ。
「馬車がないのならば、私の馬車で一緒に帰れば良い」
という、甘い誘いに乗ってしまったのだ。
しかし、アクせりの横だと、とても緊張する。
そう、今、私は可怪しいことにアクセリの横に座っているのだ。
馬車は4人乗りで普通は二人で乗る時は、私が進行方向と逆の位置に座って、貴族の爵位が上位のアクセリが進行方向に座るのが普通なのだ。
なのに
「ライラ嬢は進行方向に座ってくれ」
とアクセリに乗る時に言われたのだ。
「そのようなわけにはいかないでしょう。アクセリ様のほうが私よりも地位が遥かに上の方ですのに」
「何を言っているのだ。君は病み上がりだろうが? それとも仮病だったのか」
私の嫌味ったらしい言葉にかちんと来て、
「それでは、甘えさせて頂きます」
と言って半ばやけで進行方向に私が座ったら、その横にアクセリが座ってきたのだ。
「えっ?」
私は驚いたが、
「疲れているんだろう。一人で寝たら馬車が揺れた時に危険だろう。揺れた時は私がライラ嬢が大丈夫なように支えるから安心してくれ」
何かアクセリらしからぬ言い訳をしてくれるんだけど。
そんなに進行方向の逆は嫌なんだろうか?
元々アクセリが指示してきたのに? 何故私の横に座るのだ?
絶対におかしい。
でも、私が席を変わる前に馬車は動き出してしまったのだ。
まあ、良いか、と思ったのだが、さすがの侯爵家の馬車といえどもこれは当主の馬車ではなくて家族使用の馬車だ。そんなに大きくはないのだ。二人でかけると体がどうしても接してしまう。
私が気にしていると
「どうした、ライラ嬢。何なら寝ても良いのだぞ。疲れているんだろう」
そんなアクせりの横で寝られるわけはないではないか。後でなんて難癖つけられるかわかったものではない。
でも、馬車の中の適度な揺れは、精神的に疲れていた私には心地よかった。
「何なら私の肩に頭を乗せても良いんだぞ」
ボソリと言われて、
いえ、そんな滅相もない
と普通ならば答えていたはずなのだ。
普段ならば絶対にアクセリを警戒してそんなことはしなかった。
でも、その時は本当に今までの希望が無くなってぼうっとしたていた時だったのだ。
わざわざ私が必要だと言いに来てくれたのが、一番嫌なアクセリだったが、それでも私は嬉しかったのだと思う。
それに散々一緒に仕事をさせられて、アクセリに免疫が出来ていたというのもあるのかもしれない。
「じゃあ、ちょっとだけ」
と言って思わず頭をアクセリの肩に乗せてしまったのだ。
氷の貴公子のアクセリだが、何故か肩は暖かかった。
そのまま、馬車で学園について、
「今日はこのまま休んだら良い」
アクセリは珍しく優しいことを言ってくれたのだ。
そう、そこで頷いておけば良かった。
「いえ、今まで休んでアクセリ様にご迷惑をおかけしたのです。もう体も大丈夫ですから、今から働かせて下さい」
私はそう言ってしまったのだ。
それが間違いだった。
「本当に良いのか?」
「はい、大丈夫です」
そう言うとアクせりはとても嬉しそうに笑ってくれた。
そこまで喜んでくれるなら、私もまだまだ価値はあるんだ。私が喜んだのが間違いだった。
そのままついていって入った生徒会室は資料が散乱していたのだ。
「良かった、ライラ嬢! 君が来てくれて。本当に助かったよ」
そこには会長以外の生徒会役員が居たが、全然仕事が終わっていなかったみたいだ。
「この前の魔物の襲撃事件の報告書がまだ出来ていなくて」
皆疲れきっているんだけど。
「もう、本当に大変だったのよ。アクセリがあなたのことを心配して本当に役立たずになって」
「リリヤ嬢、なにか言いましたか」
そこに氷のアクセリ様の声が響いた。
「いえ、なんでもないわ」
慌てて、リリヤは誤魔化したけれど、アクセリが私のことを心配して取り乱すなんてあり得ない。
大方貴重な雑用係がいなくなって慌てたというのが関の山だ。
というか、なんで皆書類仕事が出来ないのよ。
私は必死に書類仕事を始めざるを得なかった。
結局、私が自分の寮の部屋に帰れたのは就寝時間間際だったのだ。
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ここまで読んで頂いてありがとうございます。
この地味ダサ令嬢視点のサイドストーリー
『転生したら地味ダサ令嬢でしたが王子様に助けられて恋してしまいました。』https://kakuyomu.jp/works/16817330667785316908
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