若きウェルテルの悩み

 今回はゲーテの『若きウェルテルの悩み』です。本作は結末が有名すぎるので、構成について詳しく見ていきます。もし、結末を知らない、という方はこの後は読まないでください。念の為、しばらく間を空けて続きを書きます。









 






 本書ですが、報道に影響されて自殺が増える「ウェルテル効果」の由来です。本書が出版されてから、ウェルテルと同じ自殺方法が相次いだためです。知っている方が多いと思います。


 本書ですが知人に送る手紙という形式をとっています。

 他の本であれば、「説明が長いな」と思えば飛ばしても次の会話の繋がりで分かるので問題ありません。しかし、本作の場合はそうはいきません。それが本作の魅力の一つでしょう。

 手紙形式ではありますが、しゃべり言葉なのでかなり読みやすいです。また読んでいると情景が浮かび上がるように詳細で適切な表現が特徴的です。

 また、原注で詳しい土地名を伏せることで、現実のことだと感じさせる工夫がなされています。


 本作は婚約者のいる女性、ロッテにウェルテルが恋をするのですが、ロッテとの初めての出会いのシーンはかなり情熱的に書かれており、手紙が長いです。普通は二ページ程度で一通のところ、なんと十四ページも割いています。それだけ、素晴らしい出会いだったということが分かります。


 本書ですが、解説に驚くべき事実が書かれています。実は本書、著者であるゲーテの実体験がベースになっています。著者自身も、許婚いいなずけのいるシャルロッテ・ブフに恋をしたのです。ゲーテの場合はシャルロッテに何も告げずに去ります。そして、同じ頃、友人であるイェールーザレムの自殺を知ります。この二つの現実を混ぜ合わせて完成したのが、『若きウェルテルの悩み』なのです。

 ゲーテ自身の実体験だからこそ、リアルな描写ができたのでしょう。もちろん、ゲーテに文才があったことは言うまでもありません。


 今回はこの辺で。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る