江戸川乱歩傑作選

 今回は新潮文庫の『江戸川乱歩傑作選』です。すべての感想を書くとだらだらしてしまうので、私の独断でいくつかの作品を選出しました。


 以下、ネタバレを含みます。ご注意ください。念のため、空白を設けます。




















 かなり空白を設けました。


・二銭銅貨

 乱歩の処女作であり、日本初のミステリーで暗号物です。序盤に挿入された話により、臨場感が増しています。後半の暗号の解き方では「ベイコンの暗号」、「ポーのGold bug」などの具体例を挙げています。乱歩が本作を執筆するまでに、かなりの知識を詰め込んだのが想像できます。

 そして、オチが素晴らしい。泥棒が盗んだ大金と思いきや、作中の「私」の仕掛けた悪戯だったのです。とんでもなく手の込んだ悪戯です。


・D坂の殺人

 名探偵明智小五郎の初登場作です。当然、事件が起きるわけですが、作中の「私」はとんでもないことを書いています。「私はこれが犯罪事件ででもあってくれれば面白いがと思いながら、喫茶店を出た」。

 本作品にもポーの『モルグ街の殺人』やドイルの『スペックル・バンド(注:まだらの紐)』など、密室ものの作品名が登場します。後半の推理パートでは『心理試験』のはしりが見られます。


・人間椅子

 女性作家のもとに手紙と思しきものが送られてきたところから始まりますが、内容が不気味です。手紙を書いた「私」の転機になったのは、自分の入った椅子に女性が腰掛けたことですが、記述がかなり「エロい」です。これを機に「私」の目的が盗みから変わります。

 途中の感想は省きますがオチが秀逸。エロ、ホラー、オチの三拍子。30ページ前後ですが、きれいにまとめられており、濃密です。



 以上、三作品の感想でした。『人間椅子』はかなり不気味な要素が多いです。どちらかというとホラー要素が大きいですね。


 今回はこの辺で。

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