一匹狼の俺、付いてくる君

烏丸ウィリアム

第1話 孤高の俺、能天気なお前

 突然だが、他人との関わりは無駄だ。仲良くしているように見えて足を引っ張り合うだけの友情。長続きせず、妥協が苦しいだけの恋愛、自分の人生に干渉し、迷惑ばかりかける親。

 周りの人間とは、俺にとって邪魔でしかない存在だ。入学式が終わり、仲間作りをしようとするクラスメイトを横目に俺、日野冬馬ひのとうまはため息をついた。


「日野くん、この後みんなでカラオケ行かない?」


 クラスメイトの一人が話しかけてきた。ただでさえありえないのに、初日から知らないやつとカラオケなど、頭がおかしいと思う。


「俺、興味ねえし」

「えー、そんなこと言わないでさー。行こうよー」


 鬱陶しい……。俺はそいつの誘いを断り、机に臥した。カラオケに誘ってくるのは、俺に興味があってというわけではなく、ただ頭数あたまかずを増やすためだろう。人が優しさで行動することはない。それは俺の座右の銘だ。


「ねえ、日野くん」


 また誰か来た。さっきのカラオケの男は諦めたようだが、次は誰だ? 女子生徒の声なのは分かる。


「ちょっと、日野くんってば」


 顔を覗かれ、さすがに無視もできなかったので、顔を上げる。そこにはクラスの中でも一番可愛い女子が俺の前に立っていた。顔は整っていてスタイルもいい。しかし、人を見た目で判断してはならない。こういうやつほど、裏ではゲスいのだ。


「なんだよ」

「ちょっとお話ししようよ」

「断る」

「えー、なんで?」


 こういうやつこそ、絶対に裏がある。俺は無視を決め込むが、彼女は諦めず俺に話しかけてくる。


「私は月宮光つきみやひかり。よろしくね」

「勝手によろしくされても困るんだが」

「ふふ、日野くんは面白いね」


 月宮か……。どうせ明日には忘れてる。


「月宮。お前の名前を記憶に残しておく価値はない。今すぐ俺の前から消えろ」

「ひどいなあ。あっ、そうだ! 今日一緒に帰ろうよ」

「は? 話聞いてたか?」


 こういうやつは嫌い。人の話を聞かず、自分のペースで物事を進める。


「日野くんって、やっぱり面白いね」

「そんな冗談はいいから。早くどっか行ってくれるか?」


 俺はそう言って月宮を追い払うが、彼女は諦めない。しつこいやつは嫌われるぞ。


「日野くん、どうしてこの高校を選んだの?」

「家から近いからだ」

「え? それだけ?」


 月宮は驚いた表情をする。今の回答で、そんな表情になる理由が分からない。


「理由として十分だろ」

「えー、私はね、制服が可愛いからここにしたんだよ!」

「それだけか?」

「うん! 制服が可愛いと、テンション上がらない?」

「そうは思わない」


 俺ならそんな理由で選ぶはずがない。本当に能天気なやつだ。俺はこいつを無視して帰る準備をする。


「日野くん、一緒に帰ろうよ」

「断る」


 俺が教室を出ようとすると、月宮がついてくる。一体何のつもりだ? それにさっきから周りの視線が痛い……。男子からは嫉妬に狂った視線を感じる。もう勘弁してくれ……。


「……明日からは話しかけるなよ」

「えー、じゃあ連絡先教えてよ」


 月宮はそういうと、ポケットからスマホを取り出す。こいつの強引さには呆れる。日本語が通じていない。俺はどうしようもなくなり、仕方なく自分のIDを見せる。


「よし、登録完了!」


 スマホの画面には『ひかり』という名前が表示され、背景画像は爽やかな草原。能天気なこいつにはぴったりだと思った。


「日野くんのプロフィール、なんだか殺風景だね」

「うるさい」


 余計なお世話だ。人のスマホ画面を見て、勝手に評価しないでほしい。


「じゃあ、またね」


 そう言って月宮は去っていった。やっと静かになった。俺はため息をつきながら帰宅する。


 ☆


「疲れた……」


 俺は自室でプリントの整理をしていた。担任の名前とかはどうでもいい。クラスの座席もどうでもいい。部活は入らない。


「これは……」


 俺の目に留まったのは、委員会が書かれた表と応募用紙。この学校では必ず委員会に所属しなくてはならないのだ。


「うーん……」


 どの委員会もつまらなそうだ。せめて楽そうなものを……。俺は一番楽そうな図書委員会を選ぶことにした。


「じゃあ、これにするか」


 用紙に大きく丸を描く。俺はそのままベッドに入って眠りについた。

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