第36話準備運動

「よし、揃ったな。

今日は予定通り個人戦闘の訓練を行う。

まずは各人体をしっかりと解し、準備を整えろ。」


先生の声掛けに従いからだをほぐしていく。

って言ってもほぐす必要があるのは僕だけなんだけどね。


純粋な戦闘種族のカク兄にはそもそも体をほぐすという概念も必要もない。

牛鬼のカク兄は、種族として常在戦場を体現してる、そのため常にベストパフォーマンスを発揮する。

365日、24時間、いつでも何処でも不眠不休で戦えます!!

それなんてチート?

そういう種族なんで形だけ体を解している。


もう一人のヒカルもそう。

獣が狩りの前に準備運動をするかい?

しないだろう?

そういうことだ。

ヒカルも形だけ体を解している。


ミツル姉さんがいたら一緒に準備運動するのにな。

一人で黙々と柔軟を行い体を解していく。

体を解したら次は事故防止のために急所に防具をつけていく。

付け終えたら指先を針で刺して血を一滴。

血を呪符につけ身代わり人形に刺しておく。

こうしておくことで万が一の重大事故をふせいでいる。

ちなみに身代わり人形はどう見ても、丑三つ時に使われるかなりヤバめの藁人形です、ありがとうございます。

まあ見た目はアレですけども、道場内にある結界と合わさると即死を防いで、重傷も治癒してくれる医者いらずの優れものです。

見た目はアレですが。


「お待たせしました、準備できました。」


準備運動を終え、皆に声をかける。

ちなみに他の二人はとっくに準備できている。


「よろしい。

では訓練を開始する。

まずは無手での戦闘だ。

ヒカル、クロエ前にでろ。」

「はい」


ヒカルが前に出ていくけども、こっちはそれどころじゃない。


「え⁈

ちょ、ちょっと待ってください先生⁈

ヒカルとですか?

先生かカク兄とじゃなく?

僕がヒカルとですか⁈」


はいーー⁈

ヒカルと僕が戦う⁈

いや、マジでちょっと待って。

僕とヒカルとじゃ実力が違いすぎて勝負にならない。

僕が一方的にボコボコにされるだけじゃん!?

僕この中で一番戦闘能力低いんですけど。

手加減ができる先生やカク兄ならともかく、野生児ヒカルにそんな技術があるはずもなく、僕が一方的にボコボコにされるだけじゃん!?


僕、一方的にボコボコにされる。

ヒカル、一方的に僕をボコボコにする。

それはいったいなんの訓練だよ⁈










  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る