第25話これはこれでかわいいな

「まにあった〜?

まだ先生来てないよね?」


ドタドタとタツヤが入って来た。

1人だな?

ヒカルはまだなのかな?


「タツヤ、おはよう。

先生はまだ来られていないが、まもなくお見えになるだろう。

それとヒカルはどうした?

一緒ではないのか?」

「え〜ヒカル来てないの?

僕より先に出たはずだよ。」


キリハ兄の質問にタツヤが答えている。

ヒカル、あいつ安全な山道通らずに罠がある獣道通ってるんじゃ。

まだ来てないって事は罠に引っかかってんのかな?

まあ、引っかかってたら先生が回収して来られるか。


タツヤはヒカル兄達と話しながら席に向かっていく。

そちらの方を見ていたらヨルに腿をつねられた。


「兄ちゃまよそ見しちゃダメ。」

「そうですよ兄さま、ちゃんとこっちを見て下さい。」


ちょっとよそ見をしていたら怒られてしまった。


「ごめん、ごめん。

タツヤが来たからちょっと気になってね。

ここからはちゃんと集中するよ。」


うん、集中集中。

よそ見なし、よそ見なし。

小さいとはいえ女の子だ、ちゃんと向き合ってないとね。

よそ見をしてたのに怒って、ちょっとほっぺが膨れてる。

ああ、これはこれでかわいいな。

怒っていても可愛らしい。


しかしキリハ兄はさすがだな。

タツヤ達と話しながらも視線はユズとのあやとりからいっさいズレない。

しかもなんだろうね、あの超絶技巧。

会話をしながら難易度の高いのを次々と作っていくし、ユズがちゃんととれるようにユズの指にちょっとずつかけてあげたりしてるし。

ユズもユズでカク兄のあぐらの上に座ってもう夢中だよ。

視線はキリハ兄の手元に釘付けで、タツヤが来たことに気付いてすらないんじゃないかな?



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