第25話激論クラス活動

「そういうのがアリなら、『出来るだけデカイこと』もありだよな?」


 ――――そういったのは西郷さいごうを始めとしたやる気のあるグループだった。


「目標としては全然ありだね。ただそのために出来る手段は考えてあるのあるのかい?」


 本来は、意見が出そろうか相手が言うまで個別具体的な内容には言及しない方がいいのだが、西郷なら詰めてきているだろう? と言う信頼の元言葉を返した。


「当たり前だ。名所のプレートや観光案内にウチのクラスの名前を入れて貰うだったり、危険な場所にミラーや、街灯、横断歩道の設置をしてもらうんだ。カタチに残るものだしなにより行政を動かす必要があるんだ……デカイことだろ?」


「確かに西郷さいごうの言うデカイことだね。規模やモノに寄っては市長や知事から表彰されるかもな……」


 俺の言葉に西郷達は声を出して喜んだ。


・表彰されるぐらいデカイこと(物理的に残るモノだとなおのこと良し)

 ・観光案内やパンフレット作製

 ・道路標識や、ミラー、街灯、横断歩道の設置


 菜月さんは、簡潔にまとめた板書を取ってくれる。


「老人ホームなんかのホスピタル施設への訪問なんかどう?」


「いいと思う!」


「じゃぁ、動物愛護団体のお手伝いは?」


「だったら小学校とか保育園への訪問は?」


 ――――と女子達がヒートアップする。


 行政であれば要望する事だけは出来る。が、NPOや会社、学校を相手にしてのモノだと断られる可能性があるからサブプランは必須となる。

 心苦しいが軽い否定のような言葉を言わねばならない。


「意見ありがとう。どれも相手が居てこそのものだから、どれか一つ……二つと断られた時のサブプランとして、近隣地域でゴミ拾いとかが妥当かな……」


――――と女子達が発言した意見に付け加えるカタチで、デメリットを添えその後、その意見を実現するにはこういう手があるよね? とあくまでも彼女達の意見を尊重する様子を見せることで、否定している訳ではないという印象を植え付ける。


・福祉系

 ・老人ホームやホスピタル施設への訪問

 ・動物愛護団体のお手伝い

 ・小学校とか保育園への訪問

 (企業や団体あってのものなので、断られた時用のサブプランが必要)


 その後幾つか意見がでると以降は意見が出にくくなった。


「一旦、目的とそのための手段の募集は辞めてどうすれば、皆の目的を妥協できるか? と言う点で話を進めたいと思います。その後に手段……例えば『清掃活動』や『観光案内の作成』、『福祉施設の訪問』の具体的な手法を決めたいと思います。先ず目的ですが現在……」


・最小限の努力で最大のリターン

・表彰されるぐらいデカイこと(物理的に残るモノだとなおのこと良し)

・既存のホスピタル施設や団体の応援


「以上の三つに大きく纏めることが出来ます。この三つの目標はその過程において強い共通点と弱い共通点を持っており、重なった円のような状態です」


 俺の説明に合わせて、菜月さんは赤、白、黄色で三つの円を描いた。


「先ず『最小限の努力で最大のリターン』ですが、最小というのが事前準備なのか? 実働時間なのか? で妥協点が変わってい来ると思うが……その点はどうだ?」


 先ほど意見を述べてくれた男子生徒に向けて質問する。

 椅子の足を摺りなが勢いよく席を立つ。


「俺はこの学校にボランティア活動をしに来た訳じゃない。勉強していい大学に入るために来たんだ。出来るだけ無駄なことに時間を使いたくない」


 確かに、高校の偏差としては幾つと決まっているものの全員がキッチリその偏差値と言う訳ではないのだから、そういう人間が居ても可笑しくない。

 鹿威ししおどしや赤べこのように首を立てに振っている男女がいることも否定しきれない事実だ。


「質問の意図を汲んでくれ……君や君の意見に賛同する人間で構わない。君たちの言う『最小』とは、『実働時間が短ければ問題ない』のか『準備を手伝わないという意思表明』か? と聞いているんだ。理由を説明する場合は簡潔に答えてくれ」


 質問の意味を理解して二択で答えろ。正直理由なんかどうでもいい。


「どちらもYESだ。ボランティア活動をクラスでやらなければ行けないでもやることは最小限にしたい。だから登下校の最中にゴミ拾いをしました程度でも、活動内容は問題ないと思っている。海外を目指す奴は個人でボランティア活動をすればいい。国内難関を目指している人間を巻き込まないで欲しい……」


「一理ある意見をありがとう。つまり君の意見を要約すると……」


・最小限の努力で最大のリターンを!

 ・清掃活動(ゴミ拾い)

 ・資源集め(ペットボトルキャップ、アルミ缶、ベルマーク等)

☆『最小限の努力』とは『実働時間と準備が短い状態を指す』

 恐らく『最大のリターン』と言うのは、上記の状態で『ボランティア活動をした』と言う結果。

 

 ――――と俺の解釈を合わせて黒板にメモを取る。


「こういう訳だ。次に……『表彰されるぐらいデカイこと(物理的に残るモノだとなおのこと良し)』だが……これは、『最小限の努力で最大のリターンを!』と真反対のことだが、妥協することはできるか?」


「もちろん。あくまでも表彰されるぐらいデカイボランティア活動とか具体的な目標があるといいかな? ってものであって絶対にこれがいいなんてもんではないからな……」


「例えば、相手側との打ち合わせや準備なんかの仕事は、西郷達推進派の負担とするこうすれば実働が一日であれば、一回だけで済むし複数回の必要があれば、消極派は最低参加回数だけ参加すればいいとか妥協点はあるが……」


「俺はそれでも構わないぜ」


 西郷さいごう案でも女子案でもボランティア活動自体の面倒さは存在する。あくまでも女子案のスケールアップ版が西郷案なのだから……


・表彰されるぐらいデカイこと(物理的に残るモノだとなおのこと良し)

 ・観光案内やパンフレット作製

 ・道路標識や、ミラー、街灯、横断歩道の設置

☆1と意見が対立するため、妥協ラインとしては、分担を重くすることなどで妥協が必要。

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