第34話カチコミ2
「御校を卒業した『
情報を小出しにすることで、言外に証拠はあるんだから早く「勘違いでした。すいません」と認めて謝罪するように促す。が……
「やっぱり勘違いじゃないのかな? 通学路の調査だか何だか知らないけど……俺を巻き込まずに勝手にやってよ」
――――とこちらの勘違いで済ませようよとする。
もし、己が非を認めて謝罪して協力するならそれでよし、よしんば電話は無かった。「でも通学路の危険地帯を調査するのはいいことだから協力はする」と、こちらの顔を立ててくれと言ったニュアンスであれば、切り札を切ることはなかったのだが……致し方が無い。
「そうですか……」
「判ったならさっさと帰ってくれるかな? 迷惑なんだよ……」
「最近のスマートフォンって便利なんですよ。アプリ一つで録音、録画が出来てしまう……便利な世の中になったものですよね……」
名言はしないものの通話は録音してあることを匂わせる。
過剰かな? とは思ったものの今回電話した全ての学校の通話は録音しており、その音声ファイルはグループLIME状で共有されており、このように茶化されたら片一方が音声ファイルを再生、もう片一方が最初から最後までの話の流れを録音する手はずになっている。
「学校を守りたい」と言って盗撮機器を破壊した教師のように、生徒のスマホを破壊され証拠が残らないと訴えることもできないからな……
しかし、過剰と思えた判断は間違いではなかったようだ。
「――――っ!」
カエルのような顔が醜く怒りに歪んむ。
顔芸が出来ない人だな……
「さて、電話の件思い出せましたか?」
「悪いけど! こっちは――――」
「
声を荒げ怒鳴り付ける事でこちらを委縮させようとする。
老齢教師の方を見ると「頑張りな」と言いたげにサムズアップをしている。
「さぁディープワン先生、応接室でお話ししましょうか?」
半魚人を見ながらそう言うと半魚人は、「チッ」と短い舌打ちをしてこう言った。
「何だ君は? 人の名前を呼ばずにバカにしているのか?」
「バカにはしてないです。礼儀知らずだと思ってそれなりに対応してるんです」
本当は内心で馬鹿にしているけど……
「あ゛っ?」
声を出して凄むように見せているが、魚面で長身のひょろがりが凄んでいるだけである。怖くもなんともない。
そして酷い魚臭さを風のように身に纏っている。
加齢臭……否、
「私は所属、名前、目的を明らかにしていますが、貴方から正式に名乗って頂いた訳ではありませんし、それに『君』とか気取った二人称を使う相手に尽くす礼節は、残念ながら持ち合わせていませんので、明治の文豪
クスクスと男女の笑い声が聞こえて来る。
「チっ! 人を舐めた態度を取りやがって……生意気なんだよ!」
「では教師として、大人として、人してマナー良い態度を示してみてください」
「あ゛っ?」
「そうやって、珍走団やハングレ、暴力団のように鳴き声を出して威嚇するのがマナーだというのなら、そのマナーに従いましょうか? 犬畜生のように暴力や権威で順位付けをするんでしたか……残念ながら権威はないので実力で順位を決めましょうか?」
そう言うと拳を構える。
「もしかして……中学サッカーの
「知ってるんですか?」
「優勝候補の中学校に勝った最後の得点を決めた選手で協力なロングパスが武器の選手だった」
「そんな選手の蹴りを喰らえば……」
「ただじゃすまないだろうね……」
外野が何か言っているが気にする暇はない。
「暴力はダメだよ!」
と止める教師にたしてこう言った。
「大丈夫ですよ。そこのディープワン曰くこれがマナーらしいので」
ニッコリとした笑顔でそう答える。
すると……
「チッ……
舌打ちをして、名前を名乗るとそれ以上は何も言わず。肩を怒らせ、大股でズカズカと机と机の間の狭い通路を我が物顔で歩いてく……
「昭和の漫画のキャラクターかよ……(ボソ)」
するとまたクスクスとした笑いに包まれる。
「ディープワンって何かしら?」
中年の女性教師が呟いた。
「私知ってますよ? 『インスマスを覆う影』という作品に出てくる種族の事で、カエルや半魚人の見た目をしているんです」
「つまり魚面、カエル面って言ってる訳ね……博識ね?」
「国語教師ですので……」
最近の国語教師はアメリカ文学にも詳しいのか……そんなことを考えながら要約、名前を名乗った男の後ろを付いて行く……
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