第7話後輩と打ち上げ

 

 自分が主体とならない出来事に、巻き込まれるMobの気分を味わった顔見世食事会の後日、気分転換も兼ねて後輩の七瀬サラと出掛けることにした。


 受験の追い込みに遠慮して久しく家に来なかったので構ってやれなかったし、今日は目一杯遊び倒すぞー。


 服センスの未熟な俺の場合、清潔感がキーワードとなる筈。

無難に黒ベースのセットアップコーデに、インナーにスエットを合わせ、ウエストポーチを肩から流す。

スニーカーも綺麗なものを履いて待ち合わせ場所に向かった。



 目的地に辿り付いたのは約束の10分前、~女の子を待たせてはいけないからね~。


「最近読めてなかったし、WEB小説でも読むか……」


と、スマホを取り出したのとほぼ同時に聞きなれた声が掛かる。


「今日も早いですね センパイ!」



 人好きのする可愛らしい笑顔を浮かべ、小走りで駆け寄る亜麻色の髪のギャル系少女――どこぞのアイドルグループ所属と言われても信じてしまいそうな程 ”映える”顔立ち――が、パステルカラーベースの可愛いを全開にした服装で肩まで出している。


 今日は特に気合が入っていらっしゃる。


メイクや服装も相まって、人目を引くこと引くこと。

周囲のギャラリー男共から『おおぅ』と言う幻聴すら聞こえた気がした。


 年齢特有の希少な美しさ+色気小さじ1/2な、あの猫を起想させる無邪気な笑顔はマズい。

その笑顔だけで惚れてしまう人もいるのではないだろうか?

『弱』から『 』程度の耐性しかない俺には効果バツグンだ。



 付き合いの長さで無理やりレジストして、動揺を見せずノータイムで反応を返した。



「そう言うサラも十分早いだろ? まだ待ち合わせまで10分もあるし……」


「センパイ待たせたら悪いかなーって思いまして……」


「女子ってメイクやヘアセットなんかで大変なんだろ?

 ってことは俺より早起きしなきゃいけないはずだし、連絡くれれば少しぐらい遅れてもいいんだぞ?」


 あははは。と愛想笑いを浮かべ


「お気遣いありがとうございます。

 次、もし遅れそうになったらLINE入れますね。」


 この一年で、もはや当たり前となった風景にホッとしていると、思い出したかのようにマシンガントークが始まった。


「センパイ、センパイ。受験の追い込みで最近映画にも行ってませんでしたよね?」


「そうだな、特撮映画二本ともまだ見れてないんだよなぁ……」


 二作品の映画とは、特撮作品が原作・原案のアニメを映画したものと、人気の監督が手掛ける特撮シリーズの事で、どちらも世間の評判は良い。


「ああ、ユニバースですか……先輩お薦めでしたので映画以外のコンテンツは見ましたけど面白かったです。

今日は先輩のお疲れ様会だから、その特撮映画でもいいですよ?」


「いや、別に俺の趣味に合わせる必要はないぞ? 恋愛映画でもアクション映画でも何でも来い」


「なら、私の観たい映画に付き合って貰えますか?」


「ここの所、ロクに相手してやれなかったし構わないよ。

それでどの映画を見るんだ?」


「これです!」


 『じゃーん』と効果音でも聞こえそうな勢いで突き出されたスマホ画面には、俺でも知るドラマの映画化作品が写っていた。


「あー確かウチで見てた奴だよな……『今日カレ』だっけ?」


「そうです それです! コレを観ないと話題についていけない、そんなレベルの作品なんですよ!」


「女子は大変だな……」


「男子だってゲームや漫画、スポーツと話題を合わせるために見たりしてるもの多いですよね……」


「社会性の高い生き物のさがみたいなものか……」


「……そんな卑屈な言い方しないでくださいよ」


 俺達は映画感に向かった。

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