第36話将を射んとする者はまず馬を射よ
相手に俺の事を詳細に計らせないために一瞬でスンとした真顔に戻す。
「では、本題に戻りましょうか? いつまで待てば出来ますか?」
「……はぁ?」
ここまでボロカスに言われたのだからもう終わり、通学路の調査の依頼になってご破算になったと思っているのだろうが……そうは問屋が卸さない。
「今は忙しいから出来ない。それは何度も言う通り分かりました。で? だったらいつまで待てばいいですか? 僕たちはただ、『児童や生徒』を守るためにお願いをしているだけなんです。どうぞご理解とご協力をお願いします」
「ここまでコケにされたのは始めてだ!」
どこの宇宙の帝王だよ……
「だから質問に答えて下さい! いつならできるんですか? もし日本語が理解できないのなら? 英語で説明しましょうか?」
勿論受験用英語なので満足に話せるとは言えないものの、並みの教育大学のある学部よりは頭のいい自身はあるので、多分大丈夫だと思いたい。
煽ることが目的だからだ。
煽る→失言→揚げ足を取って煽る。このループに陥らせることが出来ればずっと俺のターン! が出来る。
「……チっ!」
「何を面倒くさがることがあるんですか? プリントを配って回収するたったそれだけの事ですよね? 公安委員会との調整をしてくれと言っている訳でじゃない。協力さえしてくれれば、後の処理は俺達がやると言っている。そして地域協力した学校と言う名誉が御校と担当した教師にはもたらされる。悪くないお願いだと思うんですが……」
怒声が収まって少し経つそろそろこのダメな魚人の上司が仲裁に来る頃だと思うのだが……
「声のボリュームが大きいようだけど……」
年配の教師がパーテーションの間から顔を覗かせる。
「
「気持ちは分かるけど、相手のメンツを潰すのは最善の策じゃないよ……それに揉め事起こすのは色々とまずいんじゃないの? 内申響とかさ、ねぇ?」
このクソ老害め! 俺を脅す気か?
しかし、話を纏めるためには一度謝罪から入るしかないだろう……
「すいません。しかし、どうしても御校のご協力を頂きたくて熱が入ってしましいました。相手の面子の事には考えが至りませんでした。未熟者ですので今回はご容赦頂ければ幸いです」
「うん。うん。非を認め謝罪出来ること、熱量を持って事に当たれるのは素晴らしい才能だ。これからもこの調子で励むと良いよ。
「どうぞ……」
着席した年配の教師は、田中先生と同じ学年を担当しており学年主任の
調査書には書かれるかもしれないが……学校が推奨するボランティア活動での出来事だ多少のおいたは黙認されるだろう。
後はうまく本丸を納得させるだけ……
「こちら資料です」
そう言うと印刷した紙を一人分渡す。
「
「え? 要らないですよね? 上司である貴方が入らっしゃるのに……」
俺の言葉に
「まぁでも一応ね……もしかしてないのかな?」
「ありますよ」
そう言うとプリント
「もし、職員の皆さま方で書類が欲しいという方は、机の端に5組おいておきますので取りに来てください」
将を射んとする者はまず馬を射よ作戦だ。
「これはこれは丁寧に……資料なんて作ったの……すごいね……学校の配布物みたいだ……では拝見させてもらうね……他の先生方もどうかな?」
そう言うと教師がプリントを持っていく……
「ええ質問は後程お伺いしますので、先ずは資料を読み込んでからお願いします」
アマゾンなどでは会議時間を有意義にするため、最初の十分程度は資料を読み込んで、疑問点を洗い出す時間が設けられているという。こうすることで業務の効率化が出来るらしい。
数分後……
「なるほど……君たちは目標を決めてから手段を決めたわけか……『表彰される』ねぇ実に俗物的でいいじゃないか? そのための手段として歩道や街灯なんかの設置要請と言う訳か……考えたね……考えたのは多分君だろう?」
「クラス全員で考えたものです。私はそのお手伝いをしたに過ぎませんよ」
「過ぎた謙遜は嫌味になる。覚えて置いた方がいい。君は優秀だよ」
「ありがとうございます」
背景や目的そして手段を理解してもらっていると理解して貰いやすい。良い資料となのかネットで調べた成果が出ているようだ。
そして具体例を見せることで、現実感を感じさせ説得力ます事が出来る。
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